ファイティング・ファミリー

11月29日(金)公開 全国ロードショー

実話ベースの家族の愛のドラマ

 ナイト一家はイギリス東部のノリッジを拠点に、WAWという小さなプロレス団体を主催している。父リッキーと母ジュリアもプロレスラー。長男のロイと次男のザックも子供時代からリングに立っていたが、娘のサラヤも13歳でプロレスデビューした。家族の夢は、子供たちが世界一のプロレス団体WWEのレスラーとして、世界の檜舞台に立つことだ。だが長男のロイはトライアウトで選に漏れて脱落。一家の夢を背負って、新たなトライアウトにザックとサラヤが挑む。ザックは今やWAWを支える花形レスラーに育っている。だが、WWEに選ばれたのはサラヤだった。自分は兄の夢を奪ってしまったのではないかと悩むサラヤ。だがアメリカの訓練施設で彼女を待っていたのは、子供時代から鍛えてきた彼女ですら音を上げそうになる苛酷なトレーニングだった。心身共に打ちひしがれたサラヤは、休暇の一時帰省中、兄のザックにWWEを辞めたいと打ち明けたのだが……。

 イギリス出身の女性プロレスラー、ペイジの伝記映画。もともとペイジと家族を取り上げた「The Wrestlers: Fighting with My Family」というイギリスのドキュメンタリー番組があり、それを見たドウェイン・ジョンソンがプロデュースして劇映画化された作品だという。映画にはドウェイン・ジョンソン本人が、自分自身の役で出演している。ただしこのくだりは全くのフィクションだという。伝記映画の常で、映画はノンフィクションの要素とフィクションの要素を巧みにブレンド。物語はペイジのサクセスストーリーと、妹が夢をかなえる一方で、自分はその夢への道を断たれてしまった兄の葛藤を軸にして進行していく。誰かが夢をかなえる裏で、その何倍もの人たちか夢を諦めざるを得ず涙を流す。映画はそれを、ひとつの家族の中に凝縮しているのだ。影が濃いほど、光は輝いて見える。この映画では、影が強い光を生み出すのだ。

 この映画はプロレスをモチーフにしているが、内容は「夢をつかむ者と、夢を諦めた者たち」のドラマだ。これはプロレス以外のどんな世界にも存在する、「勝者と敗者の物語」と言えるだろう。ほとんどの映画は勝者を描く。だがこの映画は敗者それぞれの物語を細やかに描写することで、勝者の物語を立体的に描き出す。正直言って、僕はこの映画のヒロインにあまり魅力を感じない。WWEのファンであれば、ペイジというレスラーの物語を前提として共有し、映画に描かれない部分も補完できるのだろうが、映画だけ観ればこのヒロインのキャラクターは少々弱いのだ。しかしそれを補っているのが、ヒロインの家族であり、トレーナーであり、同期の練習生たちだ。こうした周囲の力に支えられて、映画の中のペイジはスポットライトを浴びる夢の舞台に躍り出ていく。トレーナー役のヴィンス・ヴォーンが最高。この役があることで、映画のグレードが一段引き上がっている。

(原題:Fighting with My Family)

伏見ミリオン座(劇場2)にて 
配給:パルコ 
2019年|1時間48分|アメリカ|カラー|2.39 : 1 
公式HP: https://fighting-family.com/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt6513120/

Fighting With My Family (The Original Soundtrack)
Universal-Island Records Ltd. (2019-02-22)
売り上げランキング: 18,454

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