男はつらいよ50 お帰り 寅さん

12月27日(金)公開 全国ロードショー

満男と泉の物語にピリオドを打つ完結編

 脱サラして小説家になった諏訪満男は、病気で亡くした妻の七回忌法要のため実家の柴又に戻ってくる。久しぶりに懐かしい顔が集まって思い出すのは、以前はこうした場の中心になっていた伯父さんのことだ。テキ屋をしていた寅次郎伯父さんは、惚れっぽくって、人情家で、面倒見がいい親分肌で、でもひがみっぽくて、すぐ怒って、いつも全国をふらふら飛び回って、家族に心配ばかりかけていた。でも満男はそんな伯父さんが大好きだったのだ。書店で行われたサイン会で、満男は久しぶりに懐かしい人に再会する。高校時代に付き合っていた初恋の相手・泉だ。泉は20年ほど前にヨーロッパに渡り、現地で家庭を持ち、今は国連関連の職員として世界中を飛び回っている。満男は泉を神保町のジャズ喫茶に連れて行く。店の女主人は、伯父さんの恋人だったリリーさんだ。「リリーさんはどうして伯父さんと結婚しなかったの?」。満男と泉の思い出をたどる旅は続いていく。

 『男はつらいよ』の第1作が公開されてから50年。これまでに作られたシリーズ48作に特別篇を合わせて49作。シリーズは寅さんが女性に惚れては振られて旅に出るというパターンを繰り返していくわけだが、終盤42作目からは甥っ子の満男と泉の恋愛関係に寅さんがからむ展開が増えて、これが最終48作まで続いていくことになる。ところがこの「満男と泉の物語」は、48作目の完成後、寅さん役の渥美清が死去したことで中断してしまったのだ。49作目の『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』(1997)にもその時点での満男が登場するが、そこでは泉のことには触れられていない。たぶん山田監督の中で、寅さんの物語と共に、この若い二人の恋の物語に決着を付けねばという気持ちがずっと残っていたのだと思う。今回こうして満男と泉の物語が一応完結したのは、まずは良かった。しかし未完の物語が完結してしまった寂しさも、少しあるのだ。

 物語の中では、いくつかの恋の物語が並走して行く。中心にあるのは満男と泉の恋の物語。そこに満男の両親さくらと博のなれそめが語られ、二人の過去と現在が映し出される。同時に描かれるのが、寅さんとリリーさんの物語。二人は愛し合いながらも、結局は結ばれることがなかった。この関係性が、そのまま満男と泉の関係性に重なり合っていく。満男と泉は結局結ばれなかったが、それは残念なことではあっても、決して悪いことではなかった。寅さんとリリーさんの関係も同じ事。実らなかった恋が、その人の人生を豊かにすることがある。映画の最後に歴代のマドンナがずらりと引用されるが、僕はここで涙が出た。寅さんはこれだけの人たちに振られて、振られて、振られ続けた。それが、寅さんの世界の豊かさを作っている。寅さん映画は「失恋讃歌」なのです。だからこそ、寅さん映画は多く人に愛される。この世に失恋する人がいる限り、寅さん映画は不滅なのです。

ミッドランドスクエアシネマ(スクリーン1)にて 
配給:松竹 
2019年|1時間56分|日本|カラー 
公式HP: https://www.cinemaclassics.jp/tora-san/movie50/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt10628692/

男はつらいよ お帰り 寅さん
小路 幸也 山田 洋次 朝原 雄三
講談社
売り上げランキング: 69,870

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