パラサイト 半地下の家族

1月10日(金)公開 TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

これは現代版『天国と地獄』だ

 低所得者が多く住む裏町で、家賃の安い半地下の部屋に住むキム一家は、家族全員が失業中だ。そんな中、浪人したまま定職にも就かないでいる長男ギウに、高校時代の友人が紹介してくれたのが、家庭教師のアルバイトだった。もともとその友人のバイト先だったのだが、急きょ留学が決まって後釜にギウを紹介したのだ。数日後、ギウが向かったのは高台の高級住宅地。高名な建築家が設計したというパク家の豪邸で、ギウは女子高生ダヘに英語を教えることになった。その家には小学生の息子ダソンもいて、両親は絵を教える家庭教師を探しているという。ギウは姉のギジョンを海外から帰ったばかりの美術療法士に仕立て、同じパク家に雇わせることに成功。さらにギジョンはトリックを使って一家の主人が雇っていた運転手を解雇させ、架空の運転手派遣会社を介して父ギテクを新しい運転手として雇わせる。残るは母チュンスクを雇わせる番だが、これは少し手間がかかった。

 この映画を観て、僕は黒澤明の傑作『天国と地獄』(1963)を連想した。高台にある金持ちの家と、低地にある貧しい暮らしを対比している点で、この2本の映画はよく似ているのだ。『天国と地獄』は低層民が高台の暮らしに嫉妬し、それが憎悪になって、子供の誘拐事件へと結びついていく。下から上への悪意は、最初から明確なのだ。『パラサイト 半地下の家族』においても、低層民からの高台への嫉妬や悪意は最初から明確だ。彼らは身分を偽って高台の家に侵入し、その生活を少しずつ侵食していく。そのことに対して、彼らは一切の良心の呵責も感じていない。寄生虫は宿主に巣くって栄養を摂取すればいい。そのことにいちいち、良心の痛みを感じることなどないのだ。寄生虫には寄生虫同士の生存競争がある。だが寄生虫が宿主を極端に弱らせたり殺してしまったのでは、元も子もないではないか。パラサイトする者は、宿主に気付かれぬよう静かに行動するのだ。

 この映画と『天国と地獄』の大きな違いは、高台住人の描き方にある。『天国と地獄』の高台住人は、製靴メーカーで職人から叩き上げた人物だった。現場の職人にとっては、厳しいが頼りになる親方であり、労働者たちの苦しい生活にも理解を示している。だが『パラサイト 半地下の家族』に登場する高台の人々に、そうした目下の人々に対する気持ちはない。高台住人は高台住人同士のサークルで暮らし、自分の足下で暮らす人々がいることなど、文字通りまったく何も考えてもいない。『天国と地獄』の被害者は映画を観る人たちの同情を誘うが、『パラサイト』に登場する高台の人々は、特に何か悪いことをしているわけではないのに「自業自得」という印象が生まれてしまうのだ。彼らが犯した罪は何だったのだろうか。それはおそらく、他者への思いやりのなさであり無関心だ。貧しい人々に対する無関心こそが、現代社会が犯している最大の罪。それは日本も同じだろう。

(原題:기생충)

伏見ミリオン座(劇場1)にて 
配給:ビターズ・エンド 
2019年|2時間12分|韓国|カラー|2.39 : 1|Dolby Atmos 
公式HP: http://www.parasite-mv.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt6751668/

Parasite
Parasite

posted with amazlet at 20.01.26
Genie Music Corporation, Stone Music Entertainment (2019-06-14)
売り上げランキング: 6,689

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中