ジョジョ・ラビット

落ちこぼれヒトラーユーゲントが見た戦争

1月17日(金)公開 全国ロードショー

 第二次大戦末期のドイツのとある町。友人や家族から「ジョジョ」と呼ばれている10歳の少年ヨハネス・ベッツラーは、母と二人暮らし。父はイタリア戦線で音信不通になり、姉は最近病気で亡くなったばかり。彼はヒトラーユーゲントに入隊早々、上級生から「ウサギを殺せ」と命じられて実行できず、「ウサギのジョジョ」というありがたくないあだ名を頂戴してしまう。しかも直後、汚名返上で意気込んだ手榴弾投擲訓練で大ケガを負ってしまう。一命は取り留めたが、足の障害と、大きな顔の傷が残った。キャンプの責任者だったクレンツェンドルフ大尉は、事故の責任を取って内勤の閑職に移動。ジョジョの母は退院したジョジョを大尉に預けて、負担の少ない小さな仕事を与えるように依頼する。ジョジョは宣伝ビラの配布や掲示など、大尉から回される小さな仕事を手伝うようになった。ある日のこと、ジョジョは家の屋根裏部屋から不審な物音が聞こえるのに気付いた。

 第二次大戦中のドイツが舞台の映画だが、導入部でいきなりビートルズの「抱きしめたい(ドイツ語版)」が鳴りひびくという演出にぶったまげる。これはある種のファンタジー映画であり、寓話なのだ。だから登場人物たちが全員英語でしゃべっていてもあまり不自然さはない。全体的に「作り事」として物語にオブラートがかけられているのは、物語の残酷さや陰惨さを幾分か中和する効果があると思う。この映画をリアリズムでやられると、とても正視できないような暗い話になってしまったに違いないのだ。原作はクリスティン・ルーネンスの「Caging Skies」という小説だが、映画がそれをどの程度脚色しているかは不明。この映画には舞台劇のような雰囲気もあるので、劇団四季あたりが映画の翻案上映権を購入して、ミュージカルにしてくれると面白いのではないだろうか。クレンツェンドルフ大尉には、歌いながら得意の拳銃曲撃ちを披露していただきたい。

 そのクレンツェンドルフ大尉というのは、この映画の中ではちょっと不思議な人物だ。実戦経験豊富な彼は、ドイツの敗色が濃厚なことを知っている。間もなく戦争は終わるだろうと察している。ヒトラーユーゲントの訓練キャンプなんて、まるで意味のないことだとわかっている。だから彼はだらしなく酒を飲みながら、投げやりな態度で仕事をする。(酒を飲んでいるのはPTSDからの逃避もあるのかもしれない。)同じようにドイツの敗北を予期しているのがジョジョの母で、この二人がいかなる関係にあるのかは映画で説明されていない。しかしジョジョの家がゲシュタポに家宅捜索される日に自転車で飛んできた様子や、その後の身分証を巡るやり取りを見ると、彼はたぶんジョジョの母の協力者のネットワークにいた人物なのだと思う。彼は最後にジョジョを張り飛ばして、その命を救う。飲んだくれで、だらしなくて、格好いい中年オヤジ。少し憧れてしまうじゃないか。

(原題:Jojo Rabbit)

伏見ミリオン座(劇場4)にて 
配給:ディズニー 
2019年|1時間49分|アメリカ|カラー|1.85 : 1 
公式HP: http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt2584384/

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