フォード vs フェラーリ

1月10日(金)公開 全国ロードショー

華やかなモータースポーツの舞台裏

 1959年にアメリカ人として初めてル・マン24時間耐久レースを制したキャロル・シェルビーは、心臓の持病からレースの世界を退き、レーシングカーデザイナーとしてシェルビーアメリカンを設立。しかし小所帯の会社はいつも資金繰りに苦しんでいた。数年後、そこにアメリカ最大手の自動車会社フォードから意外な提案が舞い込んでくる。「ル・マンの王者フェラーリに勝てる車を作ってほしい」というのだ。フェラーリはこの少し前に経営破綻し、フォードに会社の売却を打診していた。若者向けのスポーツ車販売に苦心していたフォードは、フェラーリのネームバリューを求めてこの提案に飛びついた。だがこれがとんだ食わせもの。フェラーリはフォードによる買収話をちらつかせることで、他社との買収交渉を有利なものにしていたのだ。フォードの最高責任者フォード2世はこれに激怒。打倒フェラーリに燃える同社の意向から、シェルビーに白羽の矢が立てられた。

 物語の主人公は2人いる。フォードからレース勝利のための新レーサー開発を託されたキャロル・シェルビーと、彼に協力するイギリス人ドライバーのケン・マイルズだ。フォードとシェルビーのパイプ役になるのは、後にフォードの社長になるリー・アイアコッカ。彼は社長就任後にフォードの黄金時代を築くのだが、経営トップのフォード2世と対立して解雇され、すぐにライバル社クライスラーの会長になって同社を経営危機から救ったアメリカ経済界の英雄的人物。アイアコッカがシェルビーと親しかったのは事実だが、映画で取り上げられたル・マン参戦にどの程度関与していたのかは微妙。しかしこの時代のフォードを象徴する人物として、アイアコッカの登場は必須だったのだろう。映画は狂言回しであるシェルビーの視点を借りながら、肥大化して官僚主義がまかり通る大企業の姿と、そこに戦いを挑んでいく一匹狼のレーシングレーサーの姿を対比していくことになる。

 あれ? これって『フォード vs フェラーリ』というタイトルじゃなかったっけ? それはその通りなのだが、映画に描かれているのは「フォード社 vs シェルビーアメリカン社」であり、「フォード陣営 vs マイルズ」であり、「組織人 vs 一個人」の戦いだ。フェラーリはフォード社のライバルではあるのだが、映画の中では両者の確執がそれほど濃厚に描かれているわけではない。レースシーンにしても、レースそのものよりレースを通じた人間の姿に主眼が置かれている。直線コースを新幹線より速い時速300キロで突っ走るスピード感を、劇場の大スクリーンでたっぷり味わえると思ったら、それはちょっと期待はずれになるだろう。それが悪いわけではない。僕はこの映画を面白く観ていたし、多くの観客は満足していたと思う。モータースポーツの世界を舞台にした、バックステージ(楽屋裏)ものみたいな感じだろうか。役者たちが、みんないい顔だ。

(原題:Ford v Ferrari)

109シネマズ名古屋(シアター7)にて 
配給:ディズニー 
2019年|2時間33分|アメリカ|カラー|2.39 : 1 
公式HP: http://www.foxmovies-jp.com/fordvsferrari/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt1950186/

フォードvsフェラーリ (オリジナル・サウンドトラック)
Hollywood Records (2019-11-15)
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