アラビアのロレンス

1月10日(金)公開 午前十時の映画祭 10 Final

異能の人が生み出した歴史

 1935年5月。イギリスの片田舎でオートバイを運転していた男が、事故を起こして死んだ。盛大な葬儀が行われて各界の名士が参列したが、死んだ男の評価については毀誉褒貶相半ばしている。彼の名はトーマス・エドワード・ロレンス。第一次大戦中にアラブのベドウィンたちを率いて、ドイツの同盟国だったオスマン帝国と戦った砂漠の英雄だ。とはいえカイロ勤務の下級士官だったロレンスは、博識だが変わり者、軍隊内では思い切り浮いた存在だった。その彼が上官に割り当てられたのは、オスマン帝国からの独立を目指すハーシム家のファイサル王子に接触してイギリス側に引き込むという仕事。だが現地で王子の客分として迎えられたロレンスは、周囲の誰もが驚く提案を行って周囲の度肝を抜く。オスマン帝国の重要拠点であるアカバ要塞を、ベドウィンのラクダ部隊で急襲しようというのだ。しかしその行く手には、灼熱の砂漠が広がっている。作戦は成功するのか?

 映画が作られたのは1962年。テレビに対抗して大画面化を進める映画業界において、戦争スペクタクル映画や歴史劇は「映画ならでは」の醍醐味が味わえる大きな呼び物だった。本作は70mmの大型フィルムを使って撮影され、2.20:1のワイドスクリーンで上映された作品だ。広大な砂漠の中で、豆粒のようなラクダや人間が戦う場面などは、スマホやタブレットでは何が起きているかまったくわからないだろう。PCの大型スクリーンや大画面テレビでもダメだ。この映画の持つ魅力をかけらでも味わうには、やはり映画館の大画面が必要だと思う。(本当ならIMAXなどの大画面で観てみたいものだ。)僕がここで「大画面がいいぞ!」と言うのは、ドラマ部分にあまり面白味を感じられないからでもある。主人公ロレンスの人物像は面白く描けているが、彼に共感できるわけでもない。浮世離れした夢想家の挫折は哀れだが、身の程知らずの自業自得に思えてしまう。

 しかしこうした見方は、映画の上っ面を眺めただけの乱暴な意見かもしれない。ロレンスは戦場の英雄であって、カイロ時代の事務仕事は苦手だったし、戦争が一段落した後の政治には手も足も出なかった。歴史の中では天の配剤とでも言える偶然で、その場所でのみ抜群の力を発揮する人物が居合わせることがある。この映画は、ロレンスをそうした人物として描こうとしている。彼がファイサル王子に出会ったのも、アリやアウダ・アブ・タイといった人物に出会ったのも、計画が合ったわけではなく偶然だ。彼はその偶然が功を奏して、その時代を代表する英雄になった。彼はカイロでは木偶の坊だったし、政治の場では無力だった。本人の望むと望まざるとに関係なく、彼は砂漠の戦場で、アラブ人たちに囲まれてしか力を発揮できなかったのだ。現実のロレンスがどんな人物だったのかは知らない。だが映画はロレンスを、そうした極めて特殊なヒーローとして描き出している。

(原題:Lawrence of Arabia)

ミッドランドスクエアシネマ2(スクリーン12)にて 
配給:ソニー・ピクチャーズ 
1962年|3時間47分|イギリス|カラー|2.20 : 1 
公式HP: http://asa10.eiga.com/2019/cinema/902.html 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt0056172/

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