AI崩壊

1月31日(金)公開 全国ロードショー

面白いテーマに脚本が追いついていない


 2025年。画期的な医療AIシステム「のぞみ」の開発者・桐生浩介は、共同研究者だった妻を病気で亡くした後、まだ幼い一人娘を連れて日本を去った。それから5年。厚労省認可の医療システムとして各医療機関に導入された「のぞみ」は、診断・診察のサポートから、投薬管理、手術補助、人々の日常の健康チェックまで、幅広く利用される医療や健康のためのインフラになっていた。この功績を表彰しようと、日本に呼び戻された桐生。だがその目の前で、突然「のぞみ」が暴走し始める。「のぞみ」を利用している医療機器も誤作動を起こし、日本中で死者がけが人が続出。社会は大混乱する。間の悪いことに、たまたまデータセンターを訪問していた桐生の娘は、堅牢なサーバールームに閉じ込められてしまった。しかもこのAI暴走を引き起こした容疑者として、警察に追われるようになってしまう。だが今この時、「のぞみ」暴走を止められるのは桐生しかいないのだ。

 AIの活用が本格的になった10年後の未来が舞台の、近未来サスペンス・アクション映画。登場するテクノロジーは現在ある技術の延長だ。コンピュータによる監視網をかいくぐって主人公が逃げる映画としてはトム・クルーズ主演の『マイノリティ・リポート』(2002)があるが、この映画はそれと同じような世界を、SFにならない範囲で描こうとしている。その分地味だが、この映画には自分たちが暮らしている世界と地続きの不気味さがある。もっともこれは基本的な考え方の部分だけで、細部はあらだらけでがっかりさせられることも多い。映画を観ていて「なぜ?」「どうして?」「うそ!」「ばかな!」「ありえな〜い(苦笑)」という描写が多すぎる。これは脚本段階できちんとあら探しして、細かな穴を一通りはふさいでおいてほしいのだ。映画は娯楽だから多少のことには目をつぶる。片目はつぶってもいい。でも両目つぶったら映画が観られないではないか。

 映画のテーマであり、前提になっているのは、AIを使った「人間の選別」だ。映画の中ではこれが考えるだにおぞましい悪行でありタブーのように描かれるのだが、同じ事は既に形を変えて行われている。これは「人間の価値の数値化」なのだ。昨年は就職情報サービス会社が学生の「内定辞退予測率」を企業に提供して問題になった。これはたまたま表沙汰になったひとつの例に過ぎない。ビッグデータやAIを使った人間の行動予測と個人の格付けは既に行われているし、今後もその範囲はどんん広がっていくだろう。だがこの映画はそれを、「民間企業が行うならOKだが、国家が行うのは大問題」ぐらいにしか考えてないらしい。AI医療システム「のぞみ」は、既に人間の価値を格付けして選別する能力を有している。映画ではその選別後、AIが自動的に人間の命を絶つことを悪としているが、判断だけAIにやらせて、あとは人間が処理すれば同じ事。それは悪だろうか?

109シネマズ名古屋(シアター5)にて 
配給:ワーナー・ブラザース映画 
2019年|2時間11分|日本|カラー 
公式HP: http://wwws.warnerbros.co.jp/ai-houkai/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt10579380/

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