テリー・ギリアムのドン・キホーテ

1月24日(金)公開 全国ロードショー

本当に完成しているか劇場で確かめよう!

 映像作家のトビーはスペインの片田舎でドン・キホーテをモチーフにしたCMを撮影していたが、どうにも気が乗らない。その夜、うさん臭いジプシーの男から手渡されたのは1枚のDVD。それは今から10年ほど前、彼が学生時代に撮った「ドン・キホーテを殺した男」という短編映画だった。いま撮影している場所は、ちょうど当時の撮影場所にも近い。翌日トビーはバイクを借りて、撮影現場だった村に出かける。10年前と変わらぬ町並み。だが人々の様子は一変していた。ヒロインを演じた少女アンジェリカは、女優になる夢を芽生えさせて都会に出ていった。ドン・キホーテを演じた靴職人の老人ハビエルは、役から抜け出せないまま今も自分が孤高の騎士ドン・キホーテだと思い込んでいる。トビーを下僕サンチョ・パンサだと思い込んだハビエルは、ささいな誤解から警察に拘束されたトビーを助けようとパトカーを襲撃。こうして、トビーとハビエルの旅が始まった。

 「あ〜、とうとう完成してしまったのだなぁ」というのが正直な感想。映画ファンの多くが知っているように、この映画は企画から数十年の間、度重なるアクシデントで何度も中断を繰り返していた。多くの映画人がこの映画を支援し、参加を表明し、完成を望みながら、決して完成を見ることができない呪われた企画だった。いつしかテリー・ギリアムの「ドン・キホーテ」は、計画がありながらも常に映画化が先送りされる巨匠の企画として、映画ファンのイマジネーションを掻き立てるビッグタイトルで有り続けた。それが完成してしまったのだ。完成して良かったと思う。これが観られて、映画ファン冥利に尽きるとも思う。しかし同時に、ひどく寂しいのだ。この映画は、このままずっと未完成であり続けてほしかったような気もする。関係者は完成させることで達成感もあるだろうし、肩の荷も降りただろう。でも皆が観たかった『ドン・キホーテ』は、はたしてこれなのか?

 巨匠監督の次回作として常に企画が取り沙汰されながら、いつまでたっても完成しなかった映画の同類としては、スコセッシの『沈黙 サイレンス』(2016)があった。これを観たときも、多くの映画ファンは「何だこんなものか」と思ったのではないだろうか。期待があまりにも大きすぎて、現物を前にしても感動がなくなってしまうのだ。こういう映画は、作る方も観る方も半分は「義務感」になっているのではないだろうか。互いに気持ちの損切りができないまま、未練たっぷりに映画を作り、一通り完結させることが最優先される。本作でトビーを演じたアダム・ドライバーは、『沈黙 サイレンス』にも宣教師役で出演していた。そして「終わらせるのが目的の映画」で昨年最も話題になった『スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け』にも……。大作映画の映画化企画に終止符を打たせる彼こそ、米映画業界における真の意味での「ターミネーター」と言えそうだ。

(原題:The Man Who Killed Don Quixote)

伏見ミリオン座(劇場2)にて 
配給:ショウゲート 
2018年|2時間13分|スペイン・ベルギー・フランス・イギリス・ポルトガル|カラー|2.35 : 1 
公式HP: http://donquixote-movie.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt1318517/

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