地獄の黙示録 ファイナル・カット

2月28日(金)公開 全国ロードショー

これは長い長い罪の告白の物語

 1969年。米国陸軍のウィラード大尉は、待機を命じられたサイゴンのホテルから軍上層部地呼び出され、ある秘密任務を命じられる。元グリーンベレーの隊長カーツ大佐が独断で軍を離脱し、ジャングルの中に自分の王国を築いているというのだ。ウィラードに命じられたのは、カーツを暗殺することだった。ウィラードは小さな哨戒艇と、任務を知らされていない4人の部下を与えられて川を遡る。そこで彼が見たのは、戦場の混乱と狂気、そして徹底した暴力だった。ヘリコプター部隊を率いる第一騎兵隊のキルゴア中佐は、サーフィンをしたいという理由だけで海岸沿いの村やジャングルを焼き払う。ジャングルの中には突然巨大ステージが組み上げられ、プレイメイトたちが前線慰問にやって来る。国境に近い最前線の基地では、指揮官さえいない中で、ドラッグ漬けの兵士たちが見えない敵相手に発砲を繰り返している。哨戒艇は少しずつ、カーツの王国に近づいていった。

 1979年に製作されたフランシス・フォード・コッポラ監督作を、監督が自ら再編集した「ファイナル・カット」バージョンだ。この映画は最初の劇場公開版が2時間33分。その後、2001年に未公開シーンなどを追加した3時間22分の「特別完全版」が作られているが、今回のファイナル・カットはそれをさらに刈り込んで3時間2分の上映尺になった。「特別完全版」との違いはあちこちにあるようだが、一番の違いは、ジャングルの中でプレイメイトたちと再会する場面が丸ごと消えていること。これによって物語の展開がスムーズになった。この映画については最初の公開時から「難解だ」と言われていたが、こうした繰り返し観ていると、それほど難しい内容とも思えない。戦場に取り憑かれた主人公ウィラードが、やはり戦場に取り憑かれているカーツという男に出会う。カーツはウィラードの分身。主人公はジャングルの奥地で自分の分身に出会い、彼を殺すのだ。

 カーツの王国は、死が支配する国だ。カーツはそこに入ったまま、ついに外には出て来なかった。だがウィラードは自分の分身であるカーツを殺した後、再び船に乗り込んで死の国を脱出する。これはじつにわかりやすい、「死と復活」のメタファーではないか。映画はその後のウィラードについて描かないが、注意深く映画を観ていればわかるとおり、この映画はすべてウィラードの回想談として過去形で綴られている。『地獄の黙示録』は、主人公ウィラードの長い長い罪の告白の物語。映画は全体が「告解」の形式を取っていて、クライマックスのカーツ殺しは「洗礼」だ。王国の場面は雨が降っていることが多いし、繰り返し水がモチーフとして登場する。どれも「洗礼」と関係するモチーフだ。定期的に船に運び込まれるカーツについての資料を通して、ウィラードは自分自身とカーツを重ね合わせていく。これは「聖体拝領」かもしれない。この映画は、じつに宗教的なのだ。

(原題:Apocalypse Now: Final Cut)

109シネマズ名古屋(シアター7)にて 
配給:KADOKAWA 
1979年|3時間2分|アメリカ|カラー|2.39 : 1 
公式HP: http://cinemakadokawa.jp/anfc/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt0078788/

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