エキストロ

3月13日(金)公開 新宿シネマカリテほか

詰まっているのは映画への愛

 つくばみらい市にある「ワープステーション江戸」は、江戸時代から昭和期の街並みを再現した大型の屋外施設だ。連日多くの映画やドラマが撮影されているが、ここには施設内での撮影に市民バランティアを派遣するNPO団体ラークがある。山本耕史主演の時代劇ドラマ「江戸の爪」にエキストラとして参加している萩野谷幸三さんも、ラークから派遣されているエキストラのひとりだ。歯科技工士として男手ひとりで息子を育て、その息子も歯科技工士になった。幸三さんは息子に仕事場を譲ってセミリタイアし、比較的自由になった時間を使って、せっせと撮影現場に通っているのだ。高齢エキストラに時折あることなのだが、幸三さんも変にこだわりが強かったり、カメラが回り始めると不用意に小芝居をして、撮影現場を止めてしまうことがある。「江戸の爪」の現場でも、幸三さんは何度かカメラを止めさせたあげく、途中で腹が痛くなって現場から離脱してしまった……。

 映画冒頭に登場するのは大林宣彦監督など、多くの映画関係者や映像関係者にインタビューしながら、「エキストラという仕事」について紹介するドキュメンタリー映画……の体裁を取ったコメディ映画だ。フェイクドキュメンタリー映画、モキュメンタリーとも呼ばれる。これが日本初かどうかは知らないが(え〜と、何かなかったっけ?)、海外の映画では時々見かける手法だ。フェイクドキュメンタリーは、観ている人のほとんどが、途中でフェイクだとわからないとシャレにならない。この映画はそのあたりのさじ加減が絶妙で、映画を観ていると、ドキュメントからフィクションに移行していく部分がじつに鮮やか。石井竜也や黒沢かずこのインタビューは、どこまでが本当でどこからがフェイクなんだろう。一番の曲者は、つくばみらい市の小田川浩市長。政治家というのは、下手な役者よりもよほど役者ですな。有権者の皆さんは、くれぐれも騙されちゃいけませんぞ……。

 この作品の嘘や悪ふざけが許せてしまうのは、あまりにも荒唐無稽で無邪気すぎることと、根底に映画やドラマなどの映像作品作りに対する「愛」があるからだと思う。「映画への愛」なんて僕は恥ずかしくてあまり口にしたくない言葉なのだが、この映画の場合はそう言わなきゃ説明がつかないのだ。そもそも『エキストロ』というタイトルは、「エキストラ」と「マエストロ」の合成語だ。(大林宣彦は本作のインタビュー中で「マエストラ」とも言っている。)この映画はエキストラに代表される、映画やドラマ作りに参加する裏方たちにスポットライトを当てている。そして、主役クラスの俳優や、監督、カメラマンなどと同じく、こうした裏方たちも映像制作に欠かせない「マエストロ」としてリスペクトしているのだ。映画は大きな脱線を繰り返しながら、最後にまた萩野谷幸三さんの物語に戻ってくる。最後に見せる表情の、なんと幸せそうなことか。この笑顔に100点!

ミッドランドスクエアシネマ2(スクリーン12)にて 
配給:吉本興業 
2019年|1時間29分|日本|カラー 
公式HP: https://extro.official-movie.com/ 

パコと魔法の絵本
パコと魔法の絵本

posted with amazlet at 20.03.14
(2013-11-26)
売り上げランキング: 188,691

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中