初恋

2月28日(金)公開 全国ロードショー

荒ぶるベッキーに注目だ!

 天涯孤独の若きプロボクサー葛城レオ。彼は体調不良を疑って診察を受けた医師から、脳腫瘍で余命わずかの宣告を受ける。手術可能だが、ボクサー生命は絶たれる。やけっぱちな気分になったレオは、夜の街で「助けて!」と叫びながらすがりついてくる若い女と、彼女を追う中年男に出会う。反射的に手が出た。プロのカウンターパンチを食らって、中年男は失神。だが殴った相手は刑事だった。逃げていたのは、やくざ組織に囲われていたシャブ中の娼婦モニカ。刑事の大伴は組織の若いやくざ加瀬とつるみ、組織に運び込まれた大量の覚醒剤を横領しようとしていたのだ。しかしただ横領したのではすぐ足が付く。だからモニカがブツを奪って逃げたことにして、彼女の身柄は闇から闇に葬ってしまえばいい。完璧に見えたシナリオ。それがレオの登場で狂い始める。一方で加瀬も、ヤクを奪う際の不手際で計画に齟齬を生じさせていた。やくざ、刑事、中国マフィアが動き出す。

 三池崇史監督の新作は、若い男女が凄まじい狂気と欲望と暴力の渦に巻き込まれて行くバイオレンス・アクション映画。主演は朝ドラ主演が控えている窪田正孝。モニカ役の小西桜子は、今年大々的に売り出し中の新進女優。ここにからんでくるのが、大森南朋、染谷将太、内野聖陽、ベッキーといった面々で、他にも有名どころがズラリと顔を揃える豪華キャスト。映画はその豪華なキャストを、思う存分、乱暴に、乱雑に、情け容赦なく、片っ端から、フル回転で使い捨てていく。脚本はこれまで何度も三池監督と組んでいる中村雅。他のスタッフも三池監督とは何度も組んでいる馴染みの顔ぶれで、映画の頭からお尻まで、三池映画の面白さがぎっしりと詰め込まれている1時間55分の映画が仕上がった。これは三池崇史作品が好きな人には、間違いなく楽しめる作品だと思う。暴力描写も洗練されて、血なまぐさいバイオレンスの中にユーモアがある。痛快なクリーンヒットだ。

 しかしこの映画には、「三池崇史ならこういう映画を撮るであろうなぁ」というニヤニヤ笑い以上には、観ている側の笑顔が大きくならないような恨みも残る。かつての三池作品が持っていた、荒削りで野蛮なエネルギーが、もうここにはないのだ。三池崇史作品の魅力だった荒々しさやとてつもない野蛮さが、作り手の中で表現技法として確立しているのだろう。かつて映画ファンが三池作品を観て喜んでいたのは、危なっかしい軽業を命綱なしで見せられているような、ヒリヒリした感覚が常にあったからだと思う。でも今回の『初恋』という映画から、そのヒリつくような危うさを感じることはできない。監督や作り手が試行錯誤せずとも、この程度のものは作れてしまう安定感を感じるのだ。それが物足りない。そんな映画の中で唯一、かつての三池映画が持っていたヤバさを感じさせたのはベッキーだった。彼女ひとりで、この映画の持つヤバイにおいの半分を受け持っている。

ミッドランドスクエアシネマ(スクリーン6)にて 
配給:東映 
2019年|1時間55分|日本|カラー|サイズ|サウンド 
公式HP: https://hatsukoi-movie.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt10228168/

初恋 (徳間文庫)
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