ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

6月12日(金)公開 全国ロードショー

名作「若草物語」の最新映画版

 ニューヨークで作家修業中のジョーは、マーチ家四人姉妹の次女だ。長女のメグは既に結婚して二児の母。三女のベスは身体が弱くて、実家で母と暮らしている。四女のエイミーは資産家の伯母に連れられて、パリで絵の勉強をしている。必死の売り込みでようやく作家としての入口に立ったジョーは、まだ姉妹が実家で一緒に暮らしていた頃のことを思い出す。

 北軍の従軍牧師として出征し、長く家を留守にしている父。不在の父にかわって、一家の大黒柱となっている母。隣人ローレンス氏の思いやり。ローレンス氏の孫、ローリーとの友情。そんな中で、ベスが猩紅熱にかかったのは家族にとって大きな事件だった。しかし家族の必死の看護もあって、ベスは一命を取り留める。他人が見れば何でもない出来事も、姉妹たちにとってはかけがえのない日々だった。しかしそれから7年たった。四姉妹の少女時代は終わったのだ。時の流れは、否応なしに家族の姿を変えていく。

 過去に何度も映画化やドラマ化されているルイーザ・メイ・オルコットの小説「若草物語」を、『レディ・バード』(2017)のグレタ・カーウィグが脚色・監督した作品。原作は四部作で、過去の映像化作品は原作をどこまで取り上げるかがまちまち。多くは第二部「続 若草物語」に描かれる、ヒロインの結婚までを区切りにするようだ。今回の映画も原作の使用範囲はほぼ同じだが、四姉妹のうち3人が家を離れた第二部を起点とし、少女時代を描いた第一部を回想として処理している。

 今回の映画の特徴は、時間をばらばらに配置したこの脚本構成にあると言えるだろう。最初は戸惑うが、現在パートの主人公たちは、必ずしも全員が幸福というわけではない。ジョーは新人作家として不本意なものを書いているし、メグの生活は苦しい。画家志望のエイミーはパリで大きな挫折に直面し、ベスの命は燃えつきようとしている。そうした今現在の現実をイノセントな過去の出来事を対比することで、現実の苛酷さや辛辣さがより浮かび上がってくるのだ。

 誰でも「無限の可能性を持つ子供時代」を持っている。子供は何者でもないが、何者にでもなれると夢を見る権利がある。でもそうした夢は現実を前にして、少しずつ姿を変えていくのだ。映画の中で僕がもっとも心を打たれたのは、現実の行き詰まりに疲れ果てたジョーが、過去に逃避しようとする場面だ。容易に過去を取り戻そうとしたことを恥じた彼女が、自分の書いた手紙を破り捨てる場面に切実なものがある。それは同じような過去への誘惑を、大人たちなら何度も経験しているからだろう。ジョーは運良く(?)過去と訣別できたが、ずるずると過去に引き戻されてしまう人も多いと思う。まあ本人が幸せなら、他人がとやかく言うことでもないけどね……。

 良い映画だが、本作は「若草物語」の決定版にはならないと思う。複雑な構成が、原作の素朴さや素直さを損なっている。

(原題:Little Women)

伏見ミリオン座(劇場1)にて 
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント  
2019年|2時間15分|アメリカ|カラー|1.85 : 1  
公式HP: https://www.storyofmylife.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt3281548/

グレタ・ガーウィグの世界 ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
グレタ・ガーウィグ(著), ジーナ・マッキンタイヤー(編集), 富永晶子(翻訳)
DU BOOKS (2020-02-28T00:00:01Z)
5つ星のうち5.0
¥4,180

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中