デッド・ドント・ダイ

6月5日(金)公開 全国ロードショー

スクリーンの中の芸能人隠し芸大会

 でっかいアメリカのど真ん中にある、ちっちゃな村センターヴィル。事件らしい事件のほとんど起きないこの村には、警官が3人しかいない。だがそこに、前代未聞の事件が起きる。村で唯一のダイナーで、店員2人が惨殺されたのだ。より正確に言うと、2人は何者かに食い殺されていた。野生動物のしわざか、それとも変質者か。若い警官のロニーは、「ゾンビかもしれない」と言う。墓地に行ってみると、確かに墓から何かがはい出したらしい穴があるではないか。やがて小さな村は、ゾンビだらけになるのだった。通りを死者が歩き回り、葬儀社でも死人が蘇り、警察でも保管中の死体が歩き始める。

 ゾンビはノロノロ歩き出し、頭部を破壊すれば死ぬ。そうとわかっていても、何しろ小さな村では生きている人より死んだ人の方が多い。次々やってくるゾンビたちが相手では、多勢に無勢。村人たちは次々ゾンビの餌食になり、あるいは新たなゾンビになってしまうのだ。

 1980年代から90年代にかけて、日本の若い映画ファンにとってのアイドルだったジム・ジャームッシュ監督の新作は、なんとゾンビ映画。どこをどう見ても超低予算なのだが、キャスティングだけは超豪華だ。主人公の警官トリオを演じるのは、ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、クロエ・ゼウィニー。森で暮らす浮浪者にトム・ウェイツ。葬儀屋の女主人にティルダ・スウィントン。村一番の嫌われ者にスティーブ・ブシェミ。金物屋の主人にダニー・グローバー。最初のゾンビがイギー・ポップとサラ・ドライバー。他にも懐かしい顔やフレッシュな顔が次々登場するのだが、この映画の目的は物語よりもまず、この豪華出演陣をどこにどうはめ込むかというパズルのような作業にあったのかもしれない。

 ゾンビにはいろいろなバリエーションがあるのだが、この映画のゾンビはロメロ作品の正統な後継者、正統派のスタンダードなゾンビだ。人間の肉を食らう以外は、生前の習慣や執着に突き動かされてのろのろと歩き回る。特殊メイクなどはそこそこちゃんとできているが、それ以外は徹底的に安い作りを貫いている。村ではゾンビ出現と同時に日の長さがデタラメになり、夜でも明るくなったりする。これはおそらく、日照条件と無関係に撮影が続けられるように導入された設定なのだ。「いま何時だ」「もう夜だ」と言えば、外が明るくても夜のシーン(昼間なのだが)が撮れる。

 物語はどうでもいい。正直言って、真面目に論じるほどのものではない。でもこの映画からは、ジャームッシュの周囲に大勢が集まって、ワイワイガヤガヤ楽しく作っている雰囲気が伝わってくる。映画を観る人もそれを楽しめばいいのだ。この映画に似ているのはゾンビ映画ではなく、テレビのバラエティ番組でお金をかけて作られる寸劇やコントだ。パロディや楽屋落ちなども含めて、ニヤニヤ笑いながら眺めていると、これはこれで楽しいものなのです。

(原題:The Dead Don’t Die)

伏見ミリオン座(劇場4)にて 
配給:ロングライド  
2019年|1時間44分|スウェーデン、アメリカ|カラー|1.85 : 1|Dolby Digital  
公式HP: https://longride.jp/the-dead-dont-die/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt8695030/

The Dead Don't Die (Original Score)
SQÜRL(アーティスト)
Backlot Music (2019-06-13T15:00:00.000Z)
5つ星のうち4.0
¥1,531

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