悪人伝

7月17日(金)公開 全国劇場公開

マ・ドンソクの存在感にしびれる!

 夜道で人が刺され、金を奪われる事件が発生した。警察は強盗殺人事件として捜査開始。だが刑事のチョン・テソクは、これが近隣で起きている他の殺人事件と同一犯だと直感する。上司は「他の管轄の事件に首を突っ込むな」と釘を刺すが、テソクは独自に捜査を進めていく。そんな中、しばしばテソクと対立している大物やくざのチャン・ドンスが、何者かに刺されて病院に担ぎ込まれた。犯人は逃亡したが、テソクはこれも連続殺人犯の仕業だと確信する。だとすれば、ドンスは一連の事件の唯一の生存者だ。ドンスは犯人の顔を見て、会話も交わしている。だが警察は一連の事件が同一犯だという見立てにはとらず、テソクは自由に使える人手がない。一方ドンスも復讐のために犯人を追うが、多くの部下が動いても雲をつかむような話。警察の調査分析能力と、やくざの人海戦術を組み合わせるしかない。こうしてテソクとドンスは、一時的に手を組むことになったのだが……。

 物語の上での主役は、連続殺人犯の存在に最初に気付き、犯人を追っていく刑事のテソク。だが映画の主役は、心ならずも警察の捜査に協力することになる大物やくざ、ドンスだろう。演じているマ・ドンソクが素晴らしい。全身が筋肉とスタミナの塊のようなドンソクの巨体が、派手なスーツの中にかろうじて押し込まれている。サンドバッグを力任せに叩き続ける登場シーンから、観客の度肝を抜くではないか。この映画は登場人物たちの背景をほとんど説明しない。連続殺人犯の背景がわからないのはいいとして、刑事のテソクも私生活の部分はほとんど描かれない。しかしこのドンスだけは、全身から発する獣じみた暴力の匂いが、細かなキャラクター設定など不要にする説得材料になっているのだ。彼は戦車のような突進力で、目の前の障害を突き破っていく。戦闘力は高い。それでいて小回りも効くのだから始末に負えない。味方につければ頼もしいが、敵に回したら恐怖だ。

 刑事とやくざのバディムービーだが、こうした映画ではしばしば、男同士の立場を越えた友情や絆、悪党に思われた男の中にある純真さや純朴さなどが描かれる。悪いやつだと思われているが、根はいいやつなんです……というお決まりのパターン。グッドバッドマン(良い悪人)というやつだ。だが『悪人伝』は巧妙にそれを避ける。唯一の例外は女子高生に傘を譲るエピソードだが、これも甘ったるくベタベタしたシーンになるのを避けている。悪党は最初から最後まで悪党。暴力で生きる男は最後まで暴力を貫く。やくざは最初から最後までやくざで、刑事は最初あら最後まで刑事。最初から最後まで、まったくぶれない。互いに歩み寄ったり、相手の立場を思いやったりもしない。しかしそれが痛快であり、気持ちいい。

 ハリウッドでリメイクするという話だが、その時、この巨漢のやくざを誰が演じるのだろうか。いっそマ・ドンソクがアメリカ版にも主演すべきだろう。

(原題:악인전 The Gangster, The Cop, The Devil)

ミッドランドスクエアシネマ2(スクリーン14)にて 
配給:クロックワークス 
2019年|1時間50分|韓国|カラー|シネマスコープ 
公式HP: http://klockworx-asia.com/akuninden/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt10208198/

The Gangster, The Cop, The Devil [Blu-ray]
Don Lee(出演)
Well Go Usa (2019-10-01T00:00:01Z)
5つ星のうち4.5
¥2,649 (中古品)

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