グレース・オブ・ゴッド 告発の時

7月17日(金)公開 ヒューマントラストシネマ渋谷ほかロードショー

神父の性犯罪と教会の偽善を告発する実録映画

 アレクサンドルは、フランスのリヨンで妻や5人の子供と暮らす40歳代の銀行幹部だ。彼は友人のひとりから、少年時代にボーイスカウト活動を指導していたプレナ神父が、再びリヨンに戻ってきたことを知らされる。「君もプレナ神父に触られたかい?」と言う友人は、プレナ神父から性的虐待を受けた被害者だった。アレクサンドルが心の中で封印していた思い出が蘇る。自分も同じように、プレナ神父の性虐待の対象になっていた。しばしば個室に呼び出され、体をなで回されてキスされた。神父の性癖は当時ボーイスカウトに参加していた子供たちにとって公然の秘密で、同じような被害を受けた子供は大勢いるはずだ。その神父が、今もまだ教会で聖職者を続け、聖書クラスで子供たちを教えているのだ。アレクサンドルは30年前の性被害を、教会に告発することにした。神父を子供たちから遠ざけ、聖職を剥奪しなければならない。アレクサンドルの戦いが始まった……。

 フランソワ・オゾン監督の新作は、フランスで「プレナ神父事件」として知られるカトリック司祭による性虐待事件をもとにした実録ドラマ作品だ。教会関係者の名前は実名だが、被害者側は仮名になっているという。おそらくこれは、複数の被害者のエピソードをもとにしながら、物語を自由に脚色するためだろう。時々回想シーンを入れながら、全体は時系列に沿って進行していく。主人公は3人の元被害者たち。銀行幹部のアレクサンドルが事件告発の口火を切り、教会内部に浄化作用がないと判断すると刑事告発する。ここから物語は、会社経営者のフランソワにバトンタッチ。プレナ神父の刑事告発で警察が動き始め、フランソワの過去の被害に警察が注目したことで、彼は自らも戦いの中に身を投じることを決意。被害者の会を結成する中で、3人目の主人公エマニュエルが合流して、物語の主導権は彼にバトンタッチされる。物語の中心が次々動いていくこの構成は面白い。

 カトリック神父による性虐待の実話を映画化した作品には、2015年度のアカデミー賞で作品賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』があり、それ以前にもペドロ・アルモドバル監督の『バッド・エデュケーション』(2004)が同じ問題を取り上げている。21世紀のカトリック教会は、教会の恥部とも言えるこの問題の解決や再発防止に真摯に取り組んでいるようにも見える。教会は過去の罪を認める。被害者にも謝罪する。だが問題を起こした聖職者は解任されず、別の場所に転任してまた同じような事件を起こすのだ。事件被害者の心の傷は深く、告白や告発には数十年の時間がかかる。だがその頃には、事件の立証が難しく、刑事事件は既に時効を迎えているのだ。映画のタイトルは「神の恵み」という意味。事件について謝罪の記者会見を行った教会幹部が、記者たちの前で「神の恵みにより事件の多くは時効になっている」と発した言葉がもとになっている。

(原題:Grâce à Dieu)

センチュリーシネマ(劇場2)にて 
配給:キノフィルムズ、東京テアトル 
2018年|2時間17分|フランス|カラー|ビスタ 
公式HP: https://graceofgod-movie.com/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt8095860/

スポットライト 世紀のスクープ カトリック教会の大罪
ボストングローブ紙〈スポットライト〉チーム(著),  (編集), 有澤 真庭(翻訳)
竹書房 (2016-04-07T00:00:01Z)
5つ星のうち3.3
¥1,760

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中