約束のネバーランド

2020年12月18日(金)公開 全国ロードショー

学芸会の素人芝居が作り出す世界

 森と広い草原に囲まれた孤児院、グレイス=フィールドハウス。そこでは幼児から16歳の誕生日を迎えるまでの子供たちが共同生活しながら、いつか里親に引き取られる日を夢見ている。エマは施設で長く暮らしている、最年長の子供のひとり。だがある日、彼女は施設の恐ろしい秘密を知ってしまう。里親に引き取られることが決まって施設を出た少女コニーが、施設と外界の境界にある門で惨殺されていたのだ。この世界は「鬼」に支配されており、孤児院は鬼たちに食料を供給する畜産農場だった。施設からの脱走を決意したエマは、親友のノーマンとレイ、同年配のドンとギルダにも声をかけて脱走計画を練り始める。だが施設責任者(ママ)のイザベラは、子供たちの不穏な動きを察知していた。施設の補助員(シスター)として配属されてきたクローネも、あっという間にエマたちの脱走計画を見破ってしまう。はたして壁の向こうには何が? 計画は成功するのだろうか?

 少年ジャンプに連載され、アニメ化もされた同名人気コミックを、浜辺美波主演で実写映画化した作品。原作は全181話で完結済みだが、映画は主人公たちが施設から脱出する序盤の40話程度までを脚色している。アニメ版のシーズン1も同じ範囲を扱っているので、物語の区切りとしてはここがちょうどいいということだろう。ただし脱出後の子供たちはただ施設を出ただけで、その前途は多難。アニメ版は続編が作られているようだが、実写版は続編を作れるだろうか? おそらくその企画も前途多難だろう。今回の映画の印象は「学芸会の素人芝居」だ。「あしながおじさん」や「キャンディ・キャンディ」のような欧風の孤児院を舞台に、欧風の名前を付けた登場人物たちが、カツラをかぶって欧風の人物たちを演じる。これは舞台劇なら成立する仕掛けで、映画のリアリズムの中では本来なら成立しにくい。しかし本作の面白さは、それが辛うじて成立していることだろう。

 この映画の中では、日本人が精一杯欧風の人物を演じてみせるという「虚構」と、グレイス=フィールドハウスという場所が作りだしている「虚構」が何とか噛み合っているのだ。映画がはじまった瞬間のファーストカットから、映画の世界はいかにもウソくさい。主人公たちの明るく弾んだ声も、幼い子供たちの屈託のない笑顔も、すべてが白々しい作りものの匂いをプンプン漂わせている。しかし、それがいい。この白々しい作り事の雰囲気があればこそ、それが剥ぎ取られていくくだりに不思議なリアリティが生まれる。これは映画的な奇跡だとすら思う。しかしそれだからこそ、僕はこの映画の続編は難しいとも思うのだ。虚構の世界を脱出した子供たちは、壁の外にある「現実」に向かい合わなければならない。そこはリアリズムの世界だ。そこに、いかにも作り物の金髪や銀髪のカツラは通用するだろうか? 虚飾に満ちた孤児院の中だけが、この物語の舞台に成り得るのだ。

109シネマズ名古屋(シアター2)にて 
配給:東宝 
2020年|1時間58分|日本|カラー 
公式HP: https://the-promised-neverland-movie.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt11027510/

映画ノベライズ 約束のネバーランド (集英社オレンジ文庫)
七緒(著), 白井 カイウ(著), 出水 ぽすか(著), 後藤 法子(著)
集英社 (2020-12-18T00:00:01Z)

¥649

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