1月9日(土)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国IMAXシアター
わからないから、不安だから、こうなった
NERVが衛星軌道上に封印していたエヴァ初号機を、アスカのエヴァ改2号機とマリの8号機が回収する。初号機搭乗員の碇シンジが目を覚ましたのは、AAAヴンダーと呼ばれる巨大戦艦の中。わけもわからず引き出された艦橋でミサトやリツコに再会したものの、二人の様子はひどくよそよそしく、周囲の若いスタッフが自分を見る目も、まるで薄気味悪いモンスターを眺めるようなものだった。シンジが知らぬ間に、14年の時間が流れているという。かつてNERVでシンジと共に戦っていたミサトたちは、現在ヴィレとうい組織を作って古巣のNERVと戦っているのだという。14年の間に何が? アスカやマリなどのエヴァ搭乗員は、14年前とまるで姿が変わらない。戸惑いと混乱の中で、シンジは自分に呼びかけるレイの声に誘われて、エヴァMark.09と共にヴンダーから脱出。しかし彼が到着した場所で見たのは、荒れ果て廃墟になったNERV本部だった。
この映画の終盤を観ていて思い出すのは、ずいぶん前に読んだ特殊詐欺についての新聞記事だ。慌てふためいて銀行の窓口で大金を引き出した中年女性を見て、窓口の行員はオレオレ詐欺の被害者を疑ったらしい。少し話を聞くと、やはりかなり怪しい。警官を呼んで振込をしないように女性を説得したが、被害女性は必死でそれに抵抗し続けたという。興味深いのは、彼女が詐欺師の話を全面的に信じたわけではないことだ。警官や銀行員が「あなた騙されてますよ」と何度言い聞かせても、被害者はそれに応じない。ついには、「騙されていてもいいんです。だからお金を振り込ませてください!」と言いだしたという。まったく合理的な行動ではない。しかし人は時として、自分でも不合理だとわかっている行動に突っ走ることがある。不安に圧し潰されそうになっている人は、目の前に差し出された1本の藁にしがみつく。それが藁だとわかっても、行動を止めることはできない。
碇シンジは不安だった。親しくしていた人たちに見放され、懐かしい人たちに素っ気なくされ、それどころか敵視され、怒りと憎悪の眼差しを向けられ、殺すと脅かされ、実際に殺される一歩手前だった。やがて知ったのは、自分が世界をメチャメチャ破壊してしまったという事実。だから彼は、「もう一度世界をやり直そう」という渚カヲルの言葉にすがりつく。溺れてパニックを起こしている人間に、目の前に差し出された1本の藁に飛びつく以外のどんな選択があり得るだろうか。カヲルに制止されたとき、シンジは自分の間違いに気付くべきだった。いや、彼は間違いに気付いていたのだ。でも不安の方が大きくて、一度握った藁を手放すことができなかった。「騙されていてもいいんです。だから僕にヤリを抜かせてください!」。彼の不安が原因で、フォースインパクトへの引き金が引かれるのだ。そして物語は完結編となる『シン・エヴァンゲリオン劇場版』へと続く……。
109シネマズ名古屋(シアター7/IMAX)にて
配給:東宝、東映、カラー
2012年(2021年)|1時間35分|日本|カラー
公式HP: https://www.evangelion.co.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt0860907/
キングレコード (2013-04-24T00:00:01Z)

¥2,329 (中古品)