天外者(てんがらもん)

2020年12月11日(金)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

三浦春馬の主演最終作

 黒船来航で幕府の屋台骨が大きく揺らいでいた幕末。外国との交易窓口として開けた長崎の町で、薩摩の五代才助(五代友厚)、土佐の坂本龍馬と岩崎弥太郎、長州の伊藤利助(伊藤博文)が出会って、あっという間に意気投合する。薩摩は攘夷派の雄藩だが、才助は開国論者だから周囲には疎まれる。彼が求めるのは、生まれた身分に関わらず、誰もが夢を持てる国を作ることだった。丸山遊郭の遊女はると親しくなった才助だったが、生麦事件とそれに次ぐ薩英戦争でイギリスの捕虜となり、はるはイギリスの商人に身請けされることを条件に才助の命を救う。はるはそのまま、イギリスへと旅立つことに。やがて薩摩藩の遣英使節団の一員としてイギリスに渡った才助は、ひとり彼女の行方を捜すが再会することはできなかった。やがて帰国した才助は、はるが胸を病んで帰国し、海辺の療養所で最後の時を過ごしていることを知る。早速彼女のもとに駆けつけた才助だったが……。

 NHK連続テレビ小説「あさが来た」(2015)で、ディーン・フジオカが演じて注目された大阪の経済人・五代友厚の伝記映画。この映画で五代を演じているのは昨年亡くなった三浦春馬で、今後何本かの出演映画が公開されるはずだが、主演映画としてはこれが遺作だろう。この映画の出来はともかくとして、本作の三浦春馬は良かったと思う。頭が良くて努力家、しかも真面目で気が強い。信念を貫き通して周囲と衝突する融通の利かなさもあるが、その底に温かさや優しさを秘めている。そんなキャラクターに、三浦春馬がぴったりはまった。というより、この映画の五代才助というキャラクターは、三浦春馬が造り出しているのだ。彼の周囲にいる他のキャラクターが、それぞれ役者によって演じられていることを感じさせるのに対して、五代だけは、ただその場に本人がいるような自然なたたずまい。これから年を取ると、より役の幅も広がっていっただろうに。じつに残念。

 だがこの映画、肝心の出来は今ひとつなのだ。五代友厚は明治維新で瓦解した大阪経済を立て直した実在の人物だが、映画は彼の青年時代にスポットを当てて、財界人としての五代友厚のエピソードは駆け足になってしまう。フィクションである遊女・はるとのロマンスが映画前半の主要なドラマとなり、実在の人物である二番目の妻・豊子は、登場したと思ったら次の登場でもう五代の妻になって子供を生んでいる。この映画は財界の立役者としての五代を描くより、若い日に彼が坂本龍馬や岩崎弥太郎、伊藤博文らと交流を持っていたことに焦点を当てたかったようだ。しかしそれがどうも中途半端すぎる。五代を主役にするなら、他のドラマで主役として描かれる龍馬を脇役にしてほしかった。だがこの映画の前半では幕末の立役者としての坂本龍馬が物語を引っ張り、五代は彼と交流を持つ脇役になってしまう。それを補うのが恋愛話かもしれないが、これもリアリティに欠ける。

ミッドランドスクエア シネマ(スクリーン6)にて 
配給:ギグリーボックス 
2020年|1時間49分|日本|カラー 
公式HP: https://tengaramon-movie.com/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt13369122/

新・五代友厚伝 近代日本の道筋を開いた富国の使徒
八木 孝昌(著), 大阪市立大学同窓会(その他)
PHP研究所 (2020-08-29T00:00:01Z)
5つ星のうち4.8
¥3,300

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