大コメ騒動

1月8日(金)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

主人公に魅力が乏しいのが残念

 大正時代半ば。富山県の小さな漁師町で暮らす松浦いとは、夫が出稼ぎ漁で留守の間、女仲仕の仕事をして家族の生活を支えている。富山は日本有数の米どころ。集められた米は貨物船で全国に出荷される。いとは他の女たちと一緒に米蔵から米俵をかつぎ、港まで運ぶのが仕事だ。一日の給金はわずかなものだが、それでもこうし女たちが働かねば漁師一家の暮らしは成り立たない。だが大正7年夏にシベリア出兵が決まると、米は軍事需要を当て込んだ投機筋の金を集めて、みるみるうちに価格が急騰した。当時の日本人労働者層は、大人1人が1日1升の米を食べていた。生きるのに必要なカロリーも栄養も、ほとんど米に頼っていたのだ。米の値上げは、庶民の生活を直撃することになった。米の値上げで困窮する人々の目の前を、多くの米が素通りして船で運び出されていく。これを阻止しない限り、米は高値が続くだろう。女たちは浜に結集し、実力行使に出るのだった……。

 1918年(大正7年)に富山県魚津町で起きた米騒動を、騒動の主役になった女たちの視点で描いた歴史エンタテインメント作品。監督・原案は本木克英。主演は井上真央。大正時代の米騒動は日本史の教科書に出ているのを大昔に目にしたことがあるが、その実態がいかなるものであるかはよく知らなかった。映画には当時の庶民の暮らしぶりや騒動の詳細が、丁寧に描かれていて興味深い。騒動は暴動のようなものではなく、「私たちはこんなに困っているんです」という困窮アピールだ。荷運びの妨害や米屋に押しかけて戸板を破るような騒ぎも起こすが、これらも「こんなに困ってます。わかってください!」というデモンストレーション。映画の中には、人々が強制的に米を奪い取るような場面は出てこない。これが当時の「米騒動」の実態なのかはわからないが、そこには富山米騒動の参加者たちを、暴力とは無縁の平和的な集団として描きたいという意図があるのだろう。

 興味深い題材の映画ではあるが、面白い映画には仕上がっていないと思う。最大の原因は、主人公のいとに魅力がないからだろう。彼女は別の土地から嫁いできたよそ者で、無口な働き者だ。映画の終盤では彼女がドラマを引っ張っていくことになるのだが、前半では騒動の影に隠れてひっそりと行動しているその他大勢のひとりにしか見えない。前半を引っ張るのは室井滋が演じる「清んさのおばば」なのだが、このおばばがなぜ人々から恐れられ、強力なリーダーシップを発揮できるのかもよくわからなかった。この映画には面白そうな人物が大勢出てくるが、どれも彫り込みが足りないのではないだろうか。例えば工藤遥が演じている私塾の先生。中尾暢樹が演じる若い新聞記者。内浦純一の警察署長。もっと面白い人物になりそうなのに、なっていないのだ。左時枝の米屋の女将は、脚本の物足りなさを貫禄で押し切った。夏木マリも良い。それでも主人公の弱さは救えなかった。

ミッドランドスクエア シネマ(スクリーン7)にて 
配給:ラビットハウス、エレファントハウス 
2021年|1時間46分|日本|カラー 
公式HP: https://daikomesodo.com/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt13209088/

大コメ騒動 ノベライズ (小学館文庫)
まい, 戸屋(著)
小学館 (2020-11-06T00:00:01Z)
5つ星のうち5.0
¥682

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