KCIA 南山(ナムサン)の部長たち

 1月22日(金)公開 シネマート新宿ほか全国ロードショー

手に汗握る暗殺シーンの再現

 大韓民国中央情報部。略称はKCIA。パク・チョンヒ大統領時代に北朝鮮工作員対策を目的に作られた情報機関だが、反政府運動の取り締まりにもその力を振るい、軍事政権の独裁を支えていた。情報部の部長は「南山の部長」と呼ばれ、大統領に次ぐ韓国ナンバー2の実力者と目されていたという。1979年。元KCIAの部長だったパク・ヨンガクがアメリカに亡命し、公聴会で大統領の数々の不正を証言しはじめる。大統領はこれに激怒。大統領警護室長のクァク・サンチョンは元部長の暗殺を提案するが、現在の情報部部長キム・ギュピョンは強く反対。米国政府の保護下にある前部長に手を出せば、米国との同盟関係に大きな亀裂が入ることは免れない。キム部長は単独で渡米し、かつての上司で友人でもある元部長と交渉する。助命の条件は、出版準備が進む回顧録を公表しないこと。だが約束を交わしてキム部長が韓国に戻った直後、回顧録の内容がマスコミに流れた。

 1979年10月26日に起きたパク・チョンヒ大統領暗殺事件を、暗殺犯である中央情報部部長の視点で描いたポリティカル・サスペンス・スリラー。映画の内容は多くが事実に沿っているが、映画は冒頭でこれを「実話を基にしたフィクションである」と宣言する。その証明のように、映画の中では事件の主要人物たちがすべて別名。暗殺実行犯であるキム・ジェギュはキム・ギュピョンになり、警護室長のチャ・ジチョルはクァク・サンチョン、元部長のキム・ヒョンウクがパク・ヨンガクという名前になっている。劇中では元部長が主人公の前任者であるかのようにも見えるが、彼がKCIAの部長を解任されたのは10年も前。その後あれこれあって米国に亡命したのだが、映画はその経緯を省略している。また元部長の失踪事件を再現した部分は、この映画で最もスリリングな場面。こうしたエピソードを作るためにも、この映画が「フィクション」でなければならないのだ。

 情報部部長は、なぜパク大統領を暗殺したのか。なぜその際、警備室長が同時に殺害されなければならなかったのか。映画はこれを、パク大統領とキム部長の「ブロマンス」の破綻として描く。映画のクライマックスでは大統領と部長が革命(1961年のクーデターのこと)の際のエピソードを語り合っているが、これは映画の創作だろう。キム部長のモデルになったキム・ジェギュは、この時のクーデターに参加していないからだ。だが映画は「実話を基にしたフィクション」であり、主人公はキム・ジェギュではなくキム・ギュピョンなのだ。彼は史実の中の暗殺犯とは違って、クーデターの中でパク大統領とともに戦った。その絆は強く、キム部長の大統領への気持ちはほとんど恋愛関係に近いのだ。「私が大統領をお守りします!」という言葉は、職務上の忠誠心と言うより、愛する恋人を守ろうとする忠実な男のそれだろう。だがこの愛は一方通行だった。愛の終わりは死だ。

(原題:남산의 부장들)

ミッドランドスクエア シネマ2(スクリーン14)にて 
配給:クロックワークス 
2019年|1時間54分|韓国|カラー 
公式HP: http://klockworx-asia.com/kcia/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt11358398/

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