ヤクザと家族 The Family

1月29日(金)公開 全国ロードショー

新しい革袋に入った古い酒

 1999年。覚醒剤中毒だった父親が亡くなり天涯孤独の身となった山本賢治は、生きる目的もないまま自暴自棄になって荒れ狂っている。父に覚醒剤を売っていた売人を襲って薬と金を強奪したり、行きつけの焼き肉屋でピストルを振り回すヤクザを叩きのめしたり。だが覚醒剤を奪われたヤクザ組織は賢治を拉致。間一髪のところで救いの手を差し伸べたのは、焼肉屋で彼に命を救われた柴咲組の柴咲組長だった。「ケン坊、俺と家族になるか」。これが縁となって、賢治は柴咲組長から杯を受けて子分となる。それから6年。柴咲組の中堅組員になった山本は、面倒を見ていたクラブで由香という女と出会った。それまで女に興味を示さなかった賢治だが、なぜか由香に心引かれていく賢治。だが敵対する侠葉会に柴咲組長が襲われ、運転手だった賢治の弟分が殺された。賢治は侠葉会の幹部を殺した若頭の身代わりとして、警察に逮捕される。それから14年の歳月が流れた……。

 ミダス王の神話みたいな物語だ。ミダス王はディオニソス神から、触れるものがすべて黄金になるという力を与えられる。最初はこの力に有頂天になるミダス王だったが、やがて自分が食べようとするものも飲もうとするものも、すべて黄金に変わってしまうことに気がつく。飢え餓えたミダス王は、自分に与えられた力が祝福ではなく呪いだったことを知る。山本賢治は何も持たない無力な若者だった。無鉄砲に振る舞っても、自分を守ってくれるものは誰もいない。だが彼はヤクザになることで、手に触れるものすべてを黄金に変える力を手に入れる。賢治の働きで組は力を付けて大きくなった。だがこの力は呪いだ。賢治は刑務所から出てきたとき、そのことに気付く。彼と触れた人々が、すべて不幸になって行くからだ。人々は賢治の呪いの力を恐れる。ヤクザを続ける限り、呪いは力を振るい続ける。それどころかヤクザを辞めても、呪いの力は彼から離れ去ってくれないのだ。

 暴対法や各種の条例で、ヤクザの仕事は昔とは様変わりした。ヤクザを辞めても、元ヤクザはさまざまな形で社会から排除される。こうしたヤクザを巡る状況を、小さなヤクザ組織とその構成員の盛衰を通して描こうとするアイデアは面白いと思う。だがその着想の新しさのわりに、ここにある物語の古くささはなんだろうか。たった一度関係を持っただけの女が彼の子供を生み、十何年もヤクザな男を待っているという身勝手な男のファンタジー。時代遅れの不器用な男が、一度は愛する女のためにヤクザ稼業から離れようとするが、結局そこに舞い戻ってしまうというお決まりの展開。物語は現代を舞台にしているのだが、同じような話を大昔に観たことがある。例えば金子正次の『竜二』(1983)だ。望月六郎の『鬼火』(1997)だ。道具立てや舞台装置は新しくなったのに、中身は20年も30年も前のまま。出演者の顔ぶれは豪華で芝居も悪くないのに、映画は残念だ。

109シネマズ名古屋(シアター5)にて 
配給:スターサンズ、KADOKAWA 
2021年|2時間16分|日本|カラー 
公式HP: https://www.yakuzatokazoku.com/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt13356884/

新聞記者 [Blu-ray]
新聞記者 [Blu-ray]

posted with AmaQuick at 2021.01.31
シム・ウンギョン(出演), 松坂桃李(出演), 本田翼(出演), 高橋和也(出演), 北村有起哉(出演), 田中哲司(出演), 藤井道人(監督)
KADOKAWA / 角川書店 (2019-11-22T00:00:01Z)
5つ星のうち4.0
¥3,115 (中古品)

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中