花束みたいな恋をした

1月29日(金)公開 全国ロードショー

ありふれた恋の始まりと終わり

 明大前の駅で終電に乗り損ねたことから知り合った山音麦と八谷絹は、趣味が似かよっていることからすっかり意気投合。その後はデートして終電まで語り合い、何度目かのデートでキスして正式交際スタート。イラストレーター志望の麦が、就活が思うように進まない絹を誘うような形で一緒に暮らし始める。大学卒業後は二人ともフリーターだったが、恐いものは何もない。新居は調布駅から徒歩30分のアパート。駅から一緒に歩く道のりが、そのままデートになるような幸せな日々。二人は誰もが認めるお似合いのカップルだった。だが就職せずにイラストの手間仕事をしている麦の生き方を、田舎の父は認めない。仕送りを止められた麦は、止むなく就職活動を始める。仕事をしながらでも、イラストを描き続けることはできるはずだ。だがいざ仕事に就いてみると、そんな目論見はあっという間に破綻してしまう。絹との関係も、少しずつギクシャクしはじめるのだった……。

 菅田将暉と有村架純主演の青春ラブストーリー。2015年に知り合ったカップルが、2020年に別れてしまうまでの5年間を描く。話としては、要するにそれだけだ。主人公たちは何か特別な人物ではないし、二人の間や周囲に、何か特別大きな事件が起きるわけでもない。時系列に直近5年の東京を描いていても、そこに何らかの社会批判があるわけではない。構成としては現代のワンシーンから物語がはじまり、回想シーンでそこに至る過去5年間が描かれるマズルカ方式。映画の冒頭で既に主人公たちは別れているので、観客は映画を観ながら「二人はどうやって知り合ったのか」「なぜ別れてしまったのか」を考え続けることになる。この構成がミステリーを生み出しているのだ。特別な大事件が起きないこの物語において、それでも最大の事件となる「二人の別れ」を、物語のクライマックスに取っておく構成は頭がいい。この構成なしに、この映画は成り立たないだろう。

 なぜ二人は別れてしまったのかについては、映画を観た人の数だけ解釈があると思う。だが僕は映画の中盤で出てくる「人生の目標は絹ちゃんとの現状維持です」という麦の台詞が、この映画や主人公たちの関係全体を象徴していると思った。麦は「いつまでも変わらず、ずっとこのままの幸せが続いてほしい」という正直な気持ちを語っただ。でも人は生きている限り変わる。どうあがいても「現状維持」には留まれない。「愛とは互いに見つめ合うことではなく、共に同じ方向を見つめることだ」というのはサン・テグジュペリの有名な言葉だが、麦と絹はあまりにも互いを見つめすぎた。それが悪いわけではない。互いに好きなら見つめ合うのは当然なのだ。でも二人が共に進んで行く明日を見失ってしまったのは、今この時と過ぎ去った昨日を見るばかりで、二人が未来について語り合わなかったからだ。まあこんなことを書きながら、僕も過去の恋愛を反省しているのだが……。

109シネマズ名古屋(シアター3)にて 
配給:東京テアトル、リトルモア 
2021年|2時間4分|日本|カラー 
公式HP: https://hana-koi.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt11219254/

ノベライズ 花束みたいな恋をした
坂元 裕二(著), 黒住 光(その他)
リトル・モア (2021-01-04T00:00:01Z)
5つ星のうち4.8
¥1,100

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