まともじゃないのは君も一緒

3月19日(金)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

パンチ不足の和製スクリューボールコメディ

 意識高い系高校生の秋本香住は、予備校講師の大野康臣にいつもイライラしている。数学オタクの大野は一般常識に欠けて、恋人もいなければ友人も少なそう。香住との会話もいつだってチグハグだ。そんな香住が憧れている男性は、青年実業家でマスコミや講演会でも引っ張りだこの宮本功。だがその宮本に戸川美奈子という婚約者がいることを知って、香住は大きなショックを受ける。宮本は仕事で美奈子の父とつながりがあるから、仕方なく婚約したに違いない。香住は大野を使って、宮本と美奈子を別れさせることを画策する。「先生、このままじゃ普通の恋愛も結婚もできないよ。私がコーチしてあげるから、この外川美奈子という女を練習台にして恋愛テクニックを磨くのよ!」。大野は香住の提案にまんまと乗せられて、美奈子にアプローチを開始する。だがこの計画には問題があった。それは香住も恋愛経験ゼロだということ。こんなことで計画はうまく行くのだろうか?

 成田凌と清原果耶主演のラブコメディ。筋立ては男女逆転版の『マイ・フェア・レディ』だ。教養のない花売り娘のイライザは、数学バカで世間知らずな予備校教師の大野になっている。言語学者のヒギンズ教授は、耳学問だけで恋愛指南する女子高生の香住に早変わり。イライザに恋する貴族青年フレディの役回りは、宮本の婚約者・美奈子だろうか。この見立てだと香住が憧れる宮本の出番がないが、この映画の宮本は、物語推進のために便利づかいされている道化役でしかない。人間的なキャラクターとして造形されているのは、大野・香住・美奈子の三人に絞られると思う。(とはいえ戯画化されて描かれる宮本のキャラは、小泉孝太郎が演じると中身空っぽの軽薄さがいかにもピッタリで面白いのだが。)会話の組み立てが絶妙でリアル。そのリアルな会話劇が、なぜか主人公たちを奇妙な行動に駆り立てていく面白さ。最初から最後まで、ニヤニヤ笑いながら映画を観ていた。

 しかしこの映画、そのニヤニヤ笑いがついに爆笑に結びつかないのが残念だ。今回映画館にはそこそこ客がいて、映画のあとは「面白かったね」といった声も聞こえたが、上映中に笑い声が聞こえた場面は皆無だった。僕の印象では、本作は全体に少し軽やかさが足りない。テンポが悪くて、少し重いのだ。主演ふたりの会話シーンは快調だ。だが映画があまり弾まない。ひょっとすると、この映画に足りないのは音楽の力かもしれない。コメディ映画の音楽は、観客の期待を高めて、笑いのポイントを周知する役割を持っている。主人公が深刻な事態に陥っていても、音楽を通じて「観客の皆さん、ここは笑っていい場面ですよ」というサインを送ることができるのだ。ヒロインが好きな男の結婚を邪魔してキテレツな行動をする映画なら、例えばジュリア・ロバーツ主演の『ベスト・フレンズ・ウェディング』という快作がある。あれはミュージカル風に音楽盛り沢山だったよな……。

TOHOシネマズ錦糸町オリナス(スクリーン7)にて 
配給:エイベックス・ピクチャーズ 
2021年|1時間38分|日本|カラー 
公式HP: https://matokimi.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt14354276/

まともじゃないのは君も一緒 (朝日文庫)

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