ジャーニー ー太古アラビア半島での奇跡と戦いの物語ー

6月25日(金)公開予定 新宿バルト9、梅田ブルク7にて公開

史実をもとにしたサウジアラビアと日本の合作長編アニメ

 6世紀半ばのアラビア半島。メッカはカアバ神殿を擁する聖地であると同時に、公益で栄える豊かな街だった。だがそのメッカを手中に収めるため、エチオピアの王アブラハが強大な軍隊を率いて攻め上ってきた。王の要求は、メッカの住民が神殿を破壊して奴隷になること。それに従わねば、全員を殺戮すると言う。あまりにも理不尽で苛酷な要求に屈服せず、多くの男たちが町を守るため立ち上がった。アウスもそのひとりだ。幼い頃に両親を亡くして盗賊として生きてきた彼は、メッカで親切な夫婦に匿われて養子となり、今は夫婦の一人娘と結婚して息子にも恵まれた。自分の過去を責めることなく受け入れてくれた養父母や妻の恩に報いるためにも、アブラハの前に膝を屈することはできないのだ。だがアブラハはアフリカから多くの兵士と巨大なゾウの部隊を連れてきて、メッカ側の寄せ集め軍に対峙する。その戦力差は圧倒的。メッカ側は兵士3名による代表戦を申し出る。

 サウジアラビアと日本の合作長編アニメ。主人公アウスなどは映画のためのオリジナルキャラクターだが、エチオピアからアブラハの軍隊がやって来てメッカを攻撃したのは、6世紀半ばにあった実在の事件だという。映画の邦題には「太古の物語」とあるが、アラビア半島がイスラム化する以前の出来事だ。日本だと6世紀は古代だが、歴史の古い中東圏だと6世紀を「太古」と呼ぶのは大げさかもしれない。イスラムの伝承では、メッカ軍を窮地に追い詰めたアブラハの大軍を、小鳥の大群が石つぶてで撃って全滅させたという。これはイスラムの開祖ムハンマドが生まれた年、西暦570年の出来事だとされている。史実をもとにしたアクションエンタテインメント作品ということで、これはアラブ版の『300〈スリーハンドレッド〉』(2006)みたいな映画になっている。ゾウに乗って現れるアブラハは「北斗の拳」風でもあるが、むしろ『300』のペルシャ王だろうか。

 歴史的に見るなら、アブラハ王によるメッカ攻撃は、「キリスト教によるアラブ侵略」という後代の十字軍にもつながる軍事行動の先駆けだった。しかし本作ではそのあたりをぼかしている。当時のアラブは多神教で、メッカのカアバ神殿も多神教のための神殿だった。後にメッカで誕生したイスラムは、多神教勢力からの攻撃を受けて一度はメディナに脱出せざるを得なかった。この映画を宗教戦争として描くと、後に預言者ムハンマドをメッカから追い出した勢力を正義の味方として描かなければならなくなる。結果として宗教要素は映画から排除されているが、そのことでアブラハの野心は底が見えない不気味なものになった。

 映画としては、たかだか1時間50分にいろいろと詰め込みすぎの印象。主人公が常に語りっぱなしで盛り上がりに欠けるし、回想シーンや別エピソードの挿入もあって、最初から連続ドラマの総集編のような感じになってしまったのは残念だった。

(原題:The Journey)

東映第1試写室にて 
配給:東映アニメーション 配給協力:東映 宣伝:東映エージェンシー 
2021年|1時間50分|サウジアラビア、日本|カラー|ビスタサイズ 
公式HP: https://journey.toeiad.co.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/

物語 アラビアの歴史-知られざる3000年の興亡 (中公新書)

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