街の上で

4月9日(金)公開 新宿シネマカリテほか全国ロードショー

下北沢を舞台にした等身大のラブコメディ

 下北沢の古着屋で働く荒川青は、付き合っていた彼女から別れを切り出されて納得できない。よりを戻そうと何度も電話をするが、そのしつこさがかえって彼女の気持ちを冷めさせてしまうことに思い至らないのだ。そんな青に、自主映画の監督だと名乗る若い女性が声をかける。自分が今撮っている映画に出演してほしいというのだ。これは遠回しな愛の告白か? 青は古本屋の店員・冬子にお願いして、役作りのための稽古に付き合ってもらう。だが撮影当日、青の芝居はどうにもうまく行かなかった。参加した打ち上げでは、「なんであんな下手くそな素人を使ったんだ」というスタッフの声が、聞くともなしに聞こえてきてしまって居たたまれない。そんな青に話しかけてきたのは、城定イハという若い女性スタッフ。二次会に流れる他のメンバーと別れ、青は誘われるままにイハの部屋を訪れる。いつの間にか打ち解けて、深夜の恋バナに花を咲かせるふたりだったのだが……。

 全編ほぼ下北沢界隈を舞台にした、今泉力哉監督の新作ラブコメディ。主演は今泉監督の『愛がなんだ』(2019)でも好演し、放送中の朝ドラ「おちょやん」にも出演していた若葉竜也。本作には同じように『愛がなんだ』と「おちょやん」に出演している成田凌が友情出演していて、このキャスティング自体がちょっとしたギャグに使われていて笑ってしまった。登場する俳優は、若葉と成田以外は見慣れない顔ばかり。それでも主人公にからむ女性俳優の経歴を見ると、皆さんそれなりに数多くの作品に出演している様子。その実力のほどは、この映画に何度も出てくる会話シーンでいかんなく発揮されていると思う。この映画はとにかく会話がリアル。それをなるべくカットを割らずに、長々と撮っているからまるでライブ中継だ。日常の会話がそうであるように、映画の中の会話も行く先が見えないまま、あっちに行ったりこっちに来たり。観客はそこに、引き込まれていく。

 彼女に振られた途端になぜかモテモテ状態になってしまうのだが、本人には自分がモテ期に入っている自覚がまったくないという主人公を、若葉竜也が自然に演じている。それにしても、この恋のすれ違いには腹が立ってくるほどだ。元彼女のことは一度脇に置いておいて、いま目の前で好意を示してくれている女の子の方に行けばいいのに……とも思ってしまうのだが、そういう小ずるいことができないのが、主人公の一途さであり、不器用さであり、恋に奥手なところであり、それだからこそ彼はモテてしまうのかもしれない。僕などは「言い寄ってくる女性がいるなら誰でもウェルカム」というのが基本姿勢なので、態度や気持ちとは裏腹にまったくモテない。モテを期待している男はモテず、モテを期待していない男はやたらモテる恋のパラドックスだ。じゃあ僕がモテへの希望を捨てて一途な態度に転じればモテるかというと、それはそれでまったくモテそうにないのだが……。

ヒューマントラストシネマ渋谷(シアター1)にて 
配給:「街の上で」フィルムパートナーズ 
配給協力:SPOTTED PRODUCTIONS 
2021年|2時間10分|日本|カラー|ヨーロピアン・ビスタ|モノラル 
公式HP: https://machinouede.com/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt11952444/

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posted with AmaQuick at 2021.04.19
岸井ゆきの(出演), 成田凌(出演), 深川麻衣(出演), 若葉竜也(出演), 穂志もえか(出演), 中島歩(出演), 片岡礼子(出演), 筒井真理子(出演), 江口のりこ(出演), 今泉力哉(監督)
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