ねばぎば新世界

7月10日(土)公開予定 K’s Cinemaにて公開

この映画を作り上げた熱意に脱帽

 通天閣を見上げる大阪新世界で、ボクシングジムを経営していた村上勝太郎(通称・勝吉)。練習生が覚醒剤取引に関与した責任を取ってジムを閉鎖した勝吉は、知り合いの串カツ屋で働きながら日々を送っていた。彼が刑務所慰問で再会したのは、かつて勝吉とふたりで近隣のヤクザ事務所を潰して回った神木雄司(通称・コオロギ)だった。刑務所を出所したコオロギは勝吉を慕って新世界に戻り、以前と同じように勝吉の子分として(とりあえずは串カツ屋で)一緒に働き始める。そのふたりが出会ったのは、何かと悪い評判のある新興宗教団体から逃げ出した、徳永武というまだ幼い少年だった。武を連れ戻しに来た教団信徒たちを追い払ったものの、武は強いマインドコントロールの支配下にある。教団について調べる中で、自分たちの恩人の娘が教団幹部になっていることを知る。武と恩人の娘を教団から救うには、教団をぶっ潰すしかない。勝吉とコオロギの戦いが始まる。

 何だかへんな映画だった。物語には腑に落ちないところがいろいろある。だがそれ以前に気になったのは、音や映像のクオリティが、商業映画の基準を満たしていないところだ。音の悪さは試写室固有の環境なのかと思ったが、この映画は実際に音が悪い。俳優の声と同時に、ガサゴソとあちこちで録音ノイズが入る。人が歩けば靴音がボコンボコンと響き、台詞を語れば服がこすれるシャカシャカ音が入る。立ったり座ったりするたび、体の動きで生じる音をいちいちマイクが拾っているのだ。商業映画で、こんなことはあり得ない。映像はいかにもビデオ画質。薄暗いところは薄暗いまま撮っていて、映像が粗くなる。補助照明とかレフ板を使っていないのだろうか。カメラの動きも変なら、フレーミングも不自然。最近はアマチュアのYouTuberでも、もっとましな機材を使って、もっとましな絵を撮るのではないだろうか。技術的には、あまりにもお粗末過ぎる映画なのだ。

 この映画はまったくダメだ。それは間違いない。でもこのダメな映画を成立させてしまった熱意に、僕は感心してしまうのだ。有名無名あわせて結構な顔ぶれを集め、それぞれに見せ場を作るサービス精神もある。おそらく誰にも正規のギャラなど払っていないだろう。極めて安く、場合によってはタダでこれだけの俳優を集められたのは、監督・脚本・主演・プロデュースを兼ねた上西雄大の人徳ではないだろうか。ここから見えるのは「映画作りの情熱」だ。何が何でも映画で語りたい物語を抱えた人が、それを自分で映画化してしまった結果がこれなのだとしたら、語るべき物語を持たない人間がそれについて何を言えるだろうか。この映画に関しては、「文句を言うなら自分で映画を作ってから言え」という作り手の反論を甘んじて受けたくなる。作られることのない名作より、作ってしまった駄作の方が映画としては価値がある。この映画はまさに価値ある作品と言えるだろう。

TCC試写室にて 
配給・宣伝:渋谷プロダクション 
2021年|1時間58分|日本|カラー|DCP|Stereo 
公式HP: https://nebagiba-shinsekai.com/ 
IMDb: https://www.imdb.com/

悪名 [DVD]

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posted with AmaQuick at 2021.04.22
勝新太郎(出演), 田宮二郎(出演), 中村玉緒(出演), 田中徳三(監督)
KADOKAWA / 角川書店 (2017-06-30T00:00:01Z)
5つ星のうち4.3
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