ベルヴィル・ランデブー

7月9日(金)公開予定 ヒューマントラストシネマ渋谷、UPLINK吉祥寺

音楽たっぷりの長編ミュージカル・アニメーション

 内気な少年シャンピオンはおばあちゃんと二人暮らし。孤独なシャンピオンのため祖母は犬のブルーノを飼うが、シャンピオンはそれほど心を動かされなかった。じつは彼が大好きなのは自転車レース。それを知った祖母が三輪車を買い与えると、シャンピオンの目は喜びに輝き、三輪車をいつまでもこぎ続ける。それから十数年後、シャンピオンは自転車選手としてツール・ド・フランスに出場するまでになった。サポートカーに乗り込むのはもちろんおばあちゃん。だが車のトラブルでシャンピオンの自転車と離れた間に、シャンピオンは自転車ごと姿を消してしまう。彼は自転車選手を狙うマフィアに誘拐されたのだ。このことを知ったおばあちゃんは、ブルーノと共に孫のシャンピオンの行方を追う。海を渡って行き着いた先は、大都会ベルヴィル。彼女がそこで出会ったのは、かつて一世を風靡した三つ子姉妹の歌手だった。おばあちゃんは、彼女たちの力を借りることにする。

 フランスのシルヴァン・ショメ監督が2002年に製作した長編アニメーション映画。劇中にはほとんど台詞が登場しない。だが主題歌の「Belleville rendez-vous」がアレンジやテンポを変えて何度も流れる他、音楽やリズムに合わせた展開や演出が幾度もあり、全体としてはミュージカル映画のような仕上がりになっている。映画の原題は「ベルヴィルの三つ子」だが、邦題の『ベルヴィル・ランデブー』はこの主題歌のタイトルから取られている。物語は誘拐された孫を祖母が救出するという単純なもので、歌あり踊りありアクションありと盛り沢山のミュージカル・コメディ。しかし明朗快活ですっきりしたものにならないのは、ストーリーの背後に「死」や「老い」があるからだろう。そもそもおばあちゃんが愛してやまないシャンピオンが、最初から最後までまったく魅力的に見えない。こうした作り手の意地悪さは、ヨーロッパ映画の感覚だろう。

 物語の舞台も時代も架空だが、映画中盤以降の主要舞台になるベルヴィルはカナダのモントリオールの街並みがモデルになっているとのこと。映画のテーマはノスタルジーだ。スウィングジャズとジプシージャズをミックスしたような主題歌は1930年代風。映画導入部のアニメーションはフライシャー兄弟の『ベティ・ブープ』シリーズ(1930年代)のようなタッチ。ジョセフィン・ベーカーやアステアなども登場するので、この導入部は大まかに1920年代から1940年代、第二次大戦前の古き良き時代が回顧対象になっている。自転車レースが行われる映画の中の「現代」は1950年代から60年代だろうか。それを懐古趣味として引用するだけで終わらせず、一度ばらばらに解体してから再構築してみせるのが本作の見どころだと思う。映画の中に製作された時代の「現在」が出てこないこともあり、製作から20年近くたっても古びることのない魅力を放っている。

(原題:Les triplettes de Belleville)

京橋テアトル試写室にて 
配給:チャイルド・フィルム 
2002年|1時間20分|フランス、カナダ、ベルギー|カラー|ヨーロピアン・ビスタ 
公式HP: https://child-film.com/Belleville/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt0286244/

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