7月23日(金)公開予定 ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
知られざるホロコースト後日談の映画化
■あらすじ
1945年。ホロコーストを生き延びたユダヤ人マックスは、家族の手掛かりを追って難民キャンプに向かう。そこで待っていたのは、妻子が殺されたという悲しい知らせだった。
彼はイギリス軍ユダヤ人部隊の士官ミハイルに声をかけられ、彼らが秘かに行っているナチス残党狩りに合流する。ユダヤ人を収容所に送った者たちや収容所の責任者を探しだし、闇から闇に葬り去るのだ。この活動の中で、マックスは「ナカム(復讐)」と名乗るユダヤ人過激派グループと接触する。
それから間もなく、ミハイルたちの部隊は別の地域に転属が決まる。マックスはミハイルたちと別行動を取り、ナカムに潜入して内情を探るスパイ任務を与えられる。かなり強引に組織にもぐり込んだマックスは、ナカムがドイツ人600万人の殺害という、前代未聞の大規模テロを計画していることを知る。
マックスはこの計画を止めるのか? それとも、計画の遂行に加担するのか?
■感想・レビュー
映画は実話をもとにしている。戦後のヨーロッパで、イギリス軍内部のユダヤ人部隊が民族的復讐のためにナチスの元将校や幹部たちを秘密裏に暗殺していたのは史実に基づいている。アッバ・コブナーと彼が組織したナカムによる、ドイツ人600万人の毒殺計画も実在のものだ。
「プランA」(本作の原題)と呼ばれるこの大規模テロ計画は未遂に終わったが、「プランB」と呼ばれるドイツ人捕虜殺害計画は実行に移されたという。ただしそれがあまり華々しい成果を上げることができなかったのは、その後のユダヤ人たちにとって幸運なことだった。
戦後パレスチナの地でのイスラエル国家建設は、ホロコーストで多大な犠牲を追ったユダヤ人に対する、国際社会の贖罪という意味合いがある。大規模なテロでユダヤ人が自ら復讐を果たしてしまえば、国際世論はユダヤ人によるイスラエル建国を認めなかったに違いない。
映画はイスラエルとドイツの合作で、監督・脚本のドロン・パズとヨアヴ・パズもイスラエル出身。この映画は政治中のドイツ人がユダヤ人を迫害し、虐殺に加担し、財産を不法に奪い取ったことを容赦なく糾弾し、戦後のドイツでもユダヤ人差別が続いていたことを批判する。そしてこれは、その後に続くイスラエル建国を正当化する伏線にもなっている。
ヨーロッパで長年に渡って差別を受け、ホロコーストで民族絶滅寸前にまで追いやられたユダヤ人は、パレスチナの地にようやく安住の地を得た。ユダヤ人を絶滅させようとしたドイツ人に対して、ユダヤ人は生き残ることで復讐を果たす。邦題の『復讐者たち』は、良いタイトルだと思う。
だがヨーロッパのユダヤ人が移り住んだパレスチナは、無人の土地ではなかった。ここからは、ユダヤ人とパレスチナ人の衝突の物語がはじまる。土地を追われ、家族を殺されたパレスチナ人たちは、新たな『復讐者たち』になる。ただしそれはまた、別の物語だ。
(原題:Plan A)
京橋テアトル試写室にて
配給:アルバトロス・フィルム
2020年|1時間50分|ドイツ、イスラエル|カラー|シネスコ|5.1ch
公式HP: https://fukushu0723.com/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt5448338/
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