アウシュヴィッツ・レポート

7月30日(金)公開予定 新宿武蔵野館ほかにて公開

死の収容所から脱走した男たち

■あらすじ

 1944年4月。二人のユダヤ人が、アウシュヴィッツの強制収容所から脱走した。その夜の点呼で脱走はすぐに発覚したが、看守のドイツ兵たちの捜索にもかかわらず、二人の行方はついに見つからなかった。

 逃げ出した囚人アルフレートとヴァルターは、収容所近くの材木置き場に隠れていたのだ。看守たちが捜索をほぼ諦めたのを見極めて、二人は材木の下の穴から抜け出すと、国境を目指して歩き始めた。昼間は人目を避けて草むらに隠れ、暗くなってからひたすら歩く。

 国境まであと数日の距離になった時、二人は森の中で地元の女性に見つかってしまう。通報されれば万事休す。だが女性は持っていたパンを二人に分け与え、親戚の男を呼んできて国境までの道案内に立てる。二人は空腹と疲労に倒れそうになりながら、国境を越えることに成功する。

 赤十字に無事保護された二人。だがここから新たな戦いが始まる。収容所の実態を世界に知らせるのだ!

■感想・レビュー

 悪名高いアウシュヴィッツ収容所から脱走し、巨大な殺戮工場の実態を外部に伝えた二人のスロバキア系ユダヤ人の実話を映画化。二人が命がけで脱出したのは、単に自分の命が惜しかったからではない。仲間の囚人やこれから送り込まれてくる多くのユダヤ人たちを救うため、連合軍の空爆で収容所を破壊してほしかったのだ。

 映画の後半で描かれているが、当時のナチスドイツはヨーロッパ各地からのユダヤ人移送について、別の土地に移住させるためだと説明していた。収容所は最終的な移住先が決まるまでの一時的な施設で、そこにいる人たちの安全は保たれている……。この説明を多くの人たちが信じた。多少怪しい部分がないでもないが、説明を信じようとした。

 連日数千数万という単位で人の命が奪われる収容所の実態は、当時の人々の想像力を越えていたのだ。だがそこに、二人の脱走ユダヤ人が現れる。アウシュヴィッツが空爆されることはついになかったが、二人の証言と持ち出した資料によってユダヤ人の移送は停滞。12万人の命が救われたという。

 映画は4つのパートで構成されている。最初は収容所の苛酷な生活。次は脱走計画の始まりと、それを知った収容所側の対応。そこに脱走した二人の囚人と彼らを助けるレジスタンスの活動が続き、最後は保護された二人の証言になる。

 この中で一番力が入るのは、脱走後の収容所の様子だろう。当時のアウシュヴィッツは、世界の中で最も人命が軽んじられた場所だったと思う。ユダヤ人の命を虫けらのようにもてあそび踏みにじる収容所看守たちの様子や、死体置き場に無造作に積み上げられた遺体の山、次々に命を落としていく名もなき囚人たちの姿から、それが伝わってくる。

 毎日何百何千という人が命を落とすその場所で、たった二人の囚人が姿を消したことに大騒ぎする看守たち。このアンバランスな姿に、強制収容所の狂気が象徴されているように思う。

(原題:The Auschwitz Report)

京橋テアトル試写室にて 
配給:STAR CHANNEL MOVIES 
2020年|1時間34分|スロバキア、チェコ、独|カラー|シネスコ|5.1ch 
公式HP: https://auschwitz-report.com/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt9415108/

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アウシュヴィッツ・レポート」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: ホロコーストの罪人 | 映画瓦版

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