5月12日(水)公開 テアトル新宿ほか全国ロードショー
高校時代の仲間たちが隠している秘密とは?
■あらすじ
友人の結婚式に参加するため、数年ぶりに勢揃いした高校時代の仲間たち6人。カラオケボックスで余興の練習をし、しこたま飲み、さんざんに酔っ払い、これで当日は大盛り上がり間違いなしと思ったのだが……。
この世で、酔っ払いの判断ほどあてにならないものはない。高校時代には赤ふんダンスが大ウケだったのに、アラサー男が同じことをやるとダメだったらしい。当日の余興は、招待客たちのドン引きに終わった。
そんな苦い披露宴の会場を後に、二次会までの時間をどう潰そうかと相談する男たち。結婚式場周囲の喫茶店は似たような客で満席。他の飲食店は夕方にならないと開かず、6人は行き場もなく路上に取り残されてしまう。
行くあてもないまま、結婚式の引き出物を振り回しながら、思い出話に花を咲かせる男たち。だがその中で、彼らが全員が抱え込みながら、決して口に出さない「ある出来事」が、少しずつ明らかにされていくのだった。
■感想・レビュー(重大なネタバレあり)
劇団ゴジゲンが2017年に発表した同名舞台劇を、舞台版の作・演出家である松居大悟が脚色・監督した青春群像劇。出演は成田凌、高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹など。(成田凌と若葉竜也は共演作が多いなぁ……。)
原作舞台は観ていないが、映画は舞台劇のニオイをぷんぷん漂わせる作りになっている。映画導入部のカラオケ屋の場面は、長回しを使ってライブ感を全面に押し出す。終盤の心臓を巡るドタバタは、映画のリアリズムを飛び越えてしまう。
これは小劇場の芝居そのものではないか。だがここで一度大きくリアリズムを逸脱するからこそ、その後の同一シーンの繰り返しが生きてくるのだろう。この場面はじつに切ない。
タイトルの『くれなずめ』は、「暮れなずむ」という言葉を命令形にしたもの。日没後もまだ空が明るい状態が「暮れなずむ」という状態で、映画ファンならこの時間帯を「マジックアワー」とか「マジックタイム」と呼ぶかもしれない。一説によれば、これは世界が一番美しく見える時間なのだという。
この映画は「友人の死」を描いていてる。友人は数年前に突然死んで、そのことはみんな知っている。誰もそのことを疑っていない。だがそれを受け入れられるかどうかは別問題。残された仲間たちは、亡くなった友人のことを忘れず、生きているかのように扱う。
人の死が「日没」だとしても、それですぐに夜になるわけではない。周囲にはまだ、太陽が出ていたときの明るさが残っている。それが「暮れなずむ」時間だ。友人の死を受け入れられない仲間たちは、完全に暮れなずんでいる。
でも、それでいいのだ。
『くれなずめ』という命令形のタイトルは、仲間たちが友人の死を完全には受け入れず、立ち止まったままぐずぐずしている様子を、肯定的に評価しようとしている。映画に描かれているように、それは悲しくて、しかし楽しい時間なのだから。
ユナイテッド・シネマ豊洲(9スクリーン)にて
配給:東京テアトル
2020年|1時間36分|日本|カラー
公式HP: https://kurenazume.com/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt14404728/
posted with AmaQuick at 2021.06.01森優太(アーティスト)
Rambling RECORDS (2021-04-28T00:00:01Z)
¥2,750Amazon.co.jpで詳細を見る