7月16日(金) 新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
傷だらけの青春ラブストーリー
■あらすじ
高校で同級生が自殺した。飛び降り死した遺体を遠巻きに眺めながら、生徒たちはスマホで写真や動画を撮っている。チェン・ニェンはその様子を見るに忍びなく、遺体の上に自分の着ていた上着を掛ける。
自殺の原因は明らかだった。クラスメイトからの執拗なイジメだ。だがそのことについて、学校側や警察の取り調べがあっても誰も口を開かない。チェン・ニェンも黙っていた。なぜって、今は高校3年生にとって、大学入試を控えた大切なときのだから。
だが遺体に上着を掛けたチェン・ニェンは、イジメグループの次のターゲットにされてしまうのだった。毎日続くしつこい嫌がらせ。待ち伏せ。暴力。彼女は少しずつ追い詰められて行く。
チェン・ニェンがシャオベイに出会ったのは、そんな中でのことだった。たまたま通りがかった夜の街で、チンピラに取り囲まれて袋だたきにあっていた彼を見かね、チェン・ニェンは警察に電話しようとしたが……。
■感想・レビュー
成績優秀だが周囲に馴染めずイジメのターゲットになる女子高生と、家族に捨てられストリートで生きてきた不良少年を主人公にしたラブストーリー。背景にあるのは中国の苛烈な受験戦争だが、その中で起きるイジメや自殺も含めて、日本でも共通するところは多いように思う。
例えば、進学校での詰め込み教育。教室内でのいびつな人間関係。凄惨なイジメに気付かない教員。イジメを知りつつ口を閉じる生徒たち。子供をかばって教員を糾弾する中国版モンスターペアレント。無力な警察。SNSの残酷さ。どれも日本にありそうなものばかりではないか。
物語は後半に入って意外な展開を見せる。僕は正直この急展開に驚かされたのだが、主人公たちの強い結びつきや信頼関係が試されるのは、この終盤になってからのこと。それまでのエピソードはすべて、この展開に向けての布石であり伏線だった。やや散漫で、少し緩くてふわふわしていた世界が、ある瞬間から一気に凝縮して熱を帯びていく。これは見応えがあった。
ワケアリ優等生と不良少年の恋という物語には普遍性があるので、この映画は権利を買って日本でリメイクしてはどうだろう。本作は主演のチョウ・ドンユイとイー・ヤンチェンシーの演技も高い評価を受けているようだが、ストーリー自体が面白いので、日本版へのローカライズと適切な配役さえあれば日本映画としても成立しそうだ。
ただしこの映画、原作になった小説ともども「日本の小説のパクリなんじゃないか?」という批判があるようだ。僕はその小説を読んでいないのでどの程度の類似性があるのかはわからないが(映画化もされてるんだけど)、その小説は中国でもベストセラーになって映画化されたりしているぐらいだから、まさか盗作レベルの類似というわけではないだろうけれど……。
映画としては一級品のでき映えだ。監督のデレク・ツァンは、名優エリック・ツァンの息子だという。
(原題:少年的你)
京橋テアトル試写室にて
配給:クロックワークス
2019年|2時間15分|中国・香港|カラー|1.85 : 1
公式HP: https://klockworx-asia.com/betterdays/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt9586294/
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