犬部!

7月22日(木・海の日)公開予定 全国ロードショー

主人公たちの戦っている相手が見えない

■あらすじ

 秋田の獣医大学に通う花井颯太は、人並み外れた犬好き。親しい友人たちは彼を「犬バカ」と呼ぶ。ある日、彼は迷い犬を一匹保護する。張り紙を作って飼い主を探したところ、それはすぐに見つかった。犬は大学の安室教授が管理していたのだ。ということは……。

 教授は外科実習の担当だ。愛護センターから殺処分予定の犬をもらい受け、生体を使った解剖実習を行っている。保護した犬はその実習教材。この犬を教授に返せば、実習で殺されてしまうことになる。颯太は一度は犬を教授に引き渡したのだが、しばらくすると犬はまた逃げて颯太のもとに戻って来てしまう。もう犬は渡せない。颯太の思いつめた様子を見て、教授は犬を颯太に引き渡すことにした。

 この出来事をきっかけに、大学に「犬部」が誕生する。メンバーは愛護センターから犬や猫を引き取って、新しい飼い主を探すのだ。

 それから16年。颯太は東京都内で自分の動物病院を開いていた。

■感想・レビュー

 2010年に発行された「北里大学獣医学部 犬部!」を原案にした、実録ドラマ作品。実録ではあるが、実話をそのまま映画化しているわけではない。おそらくモデルになった人物やその周辺の出来事を取材しながら、エピソードを登場人物に割り振っているのだろう。

 この映画のテーマは明確だ。それは「ペットの命を人間の都合で粗末にするな」ということ。主人公の颯太は、動物愛護センターに持ち込まれる犬や猫の存在に心を痛め、「ここにいる犬を全部引き取ります!」と言ってしまう熱血漢だ。彼は犬を助けるために獣医を志し、その願いに反する犬の生体解剖を断固として拒絶する。

 親友の涼介も、同じ志の持ち主だ。動物愛護センターで殺処分される犬や猫を減らすためには、愛護センターの環境を変えるしかない。だから獣医になって保健所に就職し、愛護センターの職員として組織を内側から変えようとする。犬が大好きだからこそ愛護センターに勤め、殺処分にも自分で対処しようとする誠実な男なのだ。

 物語はこの二人を軸に回っていくが、愛護センターはペットの命を使い捨てにする人間社会の象徴だ。愛護センターが悪いわけではない。人間が悪い。この映画に物足りなさを感じるのは、その「悪さ」をオブラートに包んでしまうことではないだろうか。それがこの映画の弱さになっているように思う。

 例えば映画の中には、劣悪な環境で犬を密集飼育するブリーダーが登場する。なぜ彼は犬を手放さないのか。映画を観ていても、正直それがよくわからない。このブリーダーの話から、ペットショップから不用な犬を引き取る業者の存在に触れられるのだが、その業者がどのように犬を処分しているのかもわからない。

 このブリーダーは映画に登場するだけましだ。一番ダメなのは、ペットを選り好みし、不要になったら捨てる一般の飼い主に決まっている。でもこの映画には、そうした人たちは出てこない。

角川試写室にて 
配給・宣伝:KADOKAWA 
2021年|1時間55分|日本|カラー 
公式HP: https://inubu-movie.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt14474554/

([か]8-1)北里大学獣医学部 犬部! (ポプラ文庫)

([か]8-1)北里大学獣医学部 犬部! (ポプラ文庫)

posted with AmaQuick at 2021.06.04片野 ゆか(著)
ポプラ社 (2012-04-05T00:00:01Z)
5つ星のうち4.2
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