親愛なる君へ

7月23日(金)公開予定 シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開

愛することが生み出した悲劇

■あらすじ

 ジエンイーは幼い少年ヨウユーと、その祖母シウユーと一緒に暮らしていた。ジエンイーと二人の間に血の繋がりはない。彼らは数年前に亡くなった、ジエンイーの同性パートナーの家族なのだ。

 大陸に渡って事業を興したパートナーの弟リーガンが正月に久しぶりの帰国をした日、ジエンイーは家族三人の食卓から少し距離を置くことにした。自分とパートナーの関係は、幼いヨウユーには秘密になっているからだ。彼はただの同居人に過ぎない。

 それから半年後。シウユーが亡くなった。「なぜ死んだんだ。半年前はあんなに元気だったのに!」と問い詰めるリーガンに、ジエンイーは何の反論もできない。リーガンは事情を調べはじめて愕然とする。自分の知らぬ間に、母名義の不動産は孫のシウユー名義になってる。そしてシウユーは、ジエンイーの養子になっていたのだ。

 母は財産目当てに殺されたのではないか? リーガンはシウユーを警察に告発する。

■感想・レビュー(ネタバレの可能性あり)

 回想形式というのは便利なものだ。映画の中で数年から数十年という長い年月を扱う場合、回想形式にすることで要点だけを効率的にピックアップできる。また観客に物事の「結果」だけを先に提示することで、「なぜそうなったのか」というミステリーで興味や関心を引っ張ることも期待できる。本作『親愛なる君へ』も、回想形式のそんな効果を十分に知った上で、脚本に取り入れているのだと思う。

 ただしこの回想形式も、使いすぎると効果が半減する。映画の中で現在から過去に時間がさかのぼり、それが現在に戻り、また過去に戻るというジャンプを繰り返すたびに、観客は物語から現実に引き戻される。回想形式は便利な反面、映画の虚構性を観客に突きつける諸刃の剣でもあるからだ。

 『親愛なる君へ』の回想形式については、いささかやり過ぎているというのが僕の感想だ。この映画の中には、回想シーンの中で登場人物が過去を回想する場面すらある。時間があちこちに移動し、時間軸はズタズタに引き裂かれて配置し直される。こうした理由がわからないでもないが、もっとシンプルな構成にした方が、観客は物語に入り込みやすくなったのではないだろうか。

 この映画は、喪失が生み出した悲劇の物語だと思う。主人公ジエンイーのパートナーだった男の死こそが、この映画を動かしていくエンジンになるのだ。死が動かしている物語だから、この映画が明るく楽しい展開になるはずがない。

 小さな救いがあるとすれば、ここには悪人が登場しないことだろう。あらゆる人間が、善意や、誠実さから行動している。だが彼ら全員が、不完全な人間ばかりだ。ひとつひとつは取り立てて致命的な欠点とは言えないが、それが運悪く重なり合うことで、誰も望んでいない悲劇的な結末へと運ばれていく。これはあまりに不幸な悲劇。

 だが誰も悪くないからこそ、悲劇の先にある希望を観客が感じ取ることができるのだろう。

(原題:親愛的房客)

シネマート新宿2にて 
配給:エスピーオー、フィルモット 
2020年|1時間46分|台湾|カラー|シネマスコープ|5.1ch 
公式HP: http://filmott.com/shin-ai/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt12359272/

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親愛なる君へ」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 僕も最近はネタバレに気をつかっている | 新佃島・映画ジャーナル

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