CALAMITY カラミティ

9月23日(木・祝)公開予定 新宿バルト9ほか順次全国公開

少女は「女らしさ」の枠組みを軽々と飛び越える

■あらすじ

 1860年代のアメリカ。入植地に向かう幌馬車隊の中に、12歳のマーサ・ジェーンを含むカナリー家の馬車もあった。長い旅の中で母は病死。父と子供3人は、他の家族の支援を受けながら旅を続ける。だがそんな中で父が大ケガをして動けなくなってしまった。

 周囲の助けを借りて旅を続けるカナリー家だったが、女だからと重要な仕事をさせず、自分をバカにする人たちにマーサ・ジェーンは我慢できない。彼女は自分で投げ縄や乗馬、馬車の扱いを覚え、動きにくいスカートからズボンに履き替える。だがこれは、当時の社会の中ではかなり型破りで破廉恥な行動。マーサ・ジェーンは隊の中で、厄介者扱いされるようになる。

 そんな時、彼女は軍の斥候をしているサムソン少尉に出会う。彼は幌馬車隊が予定のルートを大きく離れていることを指摘し、しばらく隊と行動を共にすることになった。だがこのことが、マーサ・ジェーンを窮地に陥れることに……。

■感想・レビュー

 西部開拓時代に実在した女性ガンマン、カラミティ・ジェーンの少女時代を描く長編アニメーション映画。カラミティ・ジェーンは男装していたことでよく知られているが、この映画は彼女が男装するまでを描いている。本作のジェーンはまだガンマンではないし、有名なワイルド・ビル・ヒコックとの友情も出てこない。だが子供ながらに男勝りな性格で活動的、運動神経抜群、社会が求める「男らしさ」や「女らしさ」に縛られない少女として描かれている。

 この映画が描いているのは、今よりずっと男女の役割分担が明確だった時代だ。男は一家の中では大黒柱であり、社会の中ではリーダー格。女は社会の中で、補助的な役目を担当する。女は男のように振る舞うのはタブーであり、そんな常識はずれのことをすれば、頭がおかしくなったと思われても仕方がない。そんな中で、マーサ・ジェーンは「家族を支える」「自分の身を守る」という必要性から男装を始める。

 この映画はしかし、主人公のマーサ・ジェーンを孤立した存在としては描かない。彼女を少年と勘違いしたことで、結果として性差を越えた友情を育むジョナスという少年がいる。彼女を一目で少女だと見抜きながら、決して女の子扱いしないマダム・ムスタッシュという女性鉱山主がいる。何かと問題のあるサムソン少尉も、彼女をただの女の子だとは見ていない。

 誰もがマーサ・ジェーンの生き方を応援していたわけではないにせよ、その生き方を理解したり容認する人たちが大勢いるのだ。これは幌馬車隊のメンバーが、仲のよい少女や父親も含めた全員で、マーサ・ジェーンを「女の子」の枠の中に無理矢理押し込めようとしたのとは対照的だ。

 ここで批判されているのは、女性差別や性役割分担の問題。これらは現代社会にも存在し、映画はそれを「西部開拓時代」に投影しているだけだ。マーサ・ジェーンは昔話の主人公ではない。彼女は我々の分身なのだ。

(原題:Calamity, une enfance de Martha Jane Cannary)

京橋テアトル試写室にて 
配給:リスキット 
2020年|1時間22分|フランス、デンマーク|カラー|シネマスコープ 
公式HP: https://calamity.info/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt9719864/

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