夏への扉 ―キミのいる未来へ―

6月25日(金)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

ハインラインの古典的SF小説を実写映画化

■あらすじ

 若き天才科学者・高倉宗一郎は、天涯孤独の身ながら、自ら設立した会社で新型ロボットの開発に熱中していた。彼にとって本当に心を許せる相手は愛猫ピートと、亡くなった父の親友の娘・璃子だけだった。だが今はもう一人、自分の秘書であり恋人でもある白石鈴がいる。宗一郎は鈴との婚約の記念として、彼女に自分の会社の持ち株の半分を譲渡する。

 これが間違いだった。会社の株を譲渡された鈴は、会社の共同経営者で璃子の養父でもある松下和人と共謀して、宗一郎が手塩にかけた会社を奪い取る。すべてを奪われた宗一郎はその現実から逃れるように、コールドスリープで30年後の未来に逃避することを決めた。だが眠りに入る前に、自分を裏切った奴らに言いたいことだけは言っておかねば気が済まない。

 これは二度目の間違いだった。和人の家に乗り込んだ宗一郎は、その場にいた鈴に捕らえられ、強引にコールドスリープに送り込まれてしまう……。

■感想・レビュー(ネタバレの可能性があります)

 ロバート・A・ハインラインのSF小説「夏への扉」を、日本を舞台に翻案して実写映画化した作品。ストーリーはほぼ原作通りだが、舞台と時代設定を変更しているので、当然細かな部分はいろいろとアレンジされている。映画の脚色で良かったのは、主人公の相棒としてヒューマノイド型ロボットのPETE(ピート)を登場させたことと、原作のリッキィにあたる璃子を17歳の高校生にしたことだろうか。

 この変更点のうち前者はかなり成功していると思うが、後者はちょっと微妙だ。物語は30年間のコールドスリープをはさんでいるが、主人公の主観的な時間の中では、ほんの数日間の出来事。婚約者に裏切られて自暴自棄になった主人公が、ほんの数日で璃子に乗り替えるのは節操がなさ過ぎないか?

 ただしこれは原作そのものが持っている問題なので、映画がこの基本的な設定を原作から引き継いでいる以上、微妙な仕上がりになってしまうのは避けられなかった。璃子の年齢を原作より大幅に引き上げ、璃子本人に愛を告白させることで、原作よりはかなりマシにはなっている。でも僕はリアリストなので、これはかなり虫のいい話だと思ってしまうのだ。小説「夏への扉」を読む中高生はこれでもいいのかもしれないが、僕は原作をようやく最近読んだので、小説でも映画でも「これはないなぁ」と思ってしまう。

 ところで一緒に映画を観た中学生の娘は、話がややこしくて理解できなかったとのこと。原作を読んでいれば話はわかるのだが(まったく同じなので)、映画だけだと確かに難しいかもしれない。伏線を大量にばらまいて、それをテキパキと回収していくわけだが、何が起きているか理解する前に話がどんどん進んでしまうのではないだろうか。もう少し時間がほしいが大作というわけでもないので、これは3〜4時間かけて、全3回ぐらいのテレビ用ミニシリーズに仕立て直した方がいいストーリーなのかもしれない。

ユナイテッド・シネマ豊洲(1スクリーン)にて 
配給:東宝、アニプレックス 
2021年|1時間58分|日本|カラー 
公式HP: https://natsu-eno-tobira.com/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt13757540/

夏への扉 [新版] (ハヤカワ文庫SF)

夏への扉 [新版] (ハヤカワ文庫SF)

posted with AmaQuick at 2021.06.30ロバート・A・ハインライン(著), まめふく(イラスト), 福島 正実(翻訳)
早川書房 (2020-12-03T00:00:01Z)
5つ星のうち4.4
¥600 (中古品)Amazon.co.jpで詳細を見る

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