ヒノマルソウル ~舞台裏の英雄たち~

6月18日(金)公開 TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

予想を裏切る実録傑作ヒューマンドラマ

■あらすじ

 1994年のリレハンメル冬季オリンピック。日本のスキージャンプ団体チームは、2位に大差を付けて1位をキープ。金メダルはほぼ確実だと思われたが、原田雅彦が最後のジャンプで失敗。日本は銀メダルに終わった。代表のひとり西方仁也は、次期長野オリンピックでの雪辱を誓う。

 「今度こそ金メダル」と意気込む西方だったが、無理がたたってオリンピックの前年に腰を痛めてしまった。治療とリハビリに励んで大会直前に競技復帰を果たしたが、結果は無念の代表落ち。現役を引退することを考えていた彼に、代表コーチの神崎が「大会のテストジャンパーをやってくれ」と声をかける。

 オリンピックのテストジャンパーは、競技の開始前にジャンプ台の雪をならし、安全を確認する裏方の仕事だ。「元代表の俺がやることじゃない」と渋る西方だったが、現場には「どんな形であれオリンピックに関わりたい」と願う若いジャンプ選手たちの姿があった……。

■感想・レビュー

 予想していた内容と全然違ったのだが、それがとても良かった。

 僕が予想したのは、長野オリンピックの感動秘話だ。代表落ちしたジャンプ選手が、若いテストジャンパーたちと一緒に、日本代表の金メダル獲得のために尽力する。そんな「無私の心」や「犠牲的精神」が愛国心と共に称賛される、道徳教材みたいな映画だと思っていたのだ。

 だが実際の映画はどうか。主人公は最初から最後まで、自分が代表落ちしたことについてグダグダと文句を言い続けている。前回オリンピックで大失敗ジャンプをした原田が代表に選ばれたの、自分が代表から落ちたのは不公平だと思っている。原田には再チャンスの機会が与えられ、場合によっては金メダリストの栄誉を与えられる。なのに自分は原田のせいで、銀メダリストに甘んじなければならない。それはずるい。不当なことだ。主人公は最後の最後まで、吹雪で競技が中断し、このままだと日本の表彰台はなくなると言われても、まだそう考えている。

 これがいい。良かった。

 このタイプの映画では、精神的にネガティブになっている(暗黒面に落ちている)主人公が、何かのきっかけで立ち直り、浮上してくるところが見せ場になる。精神の落ち込みが底付きし、周囲を巻き込みながら新たな挑戦に向けてぐんぐん気持ちが上昇して行くのだ。この底付きから浮上のタイミングが、映画のどこにあるのか? 本作はそれが、通常の映画よりずいぶん後ろに配置されている。

 必然的に映画は終盤の急上昇から劇的なハッピーエンドを迎えるが、それが不自然になっていない。観客の多くが主人公の立ち直りに期待しているのに加えて、主人公の内面ではじまっている心情の変化が、映画の中で丁寧に描写されているからだ。観客は映画を観ながら、「そんなに意地を張るな」「そろそろいいんじゃないか」とじりじりしている。そこに終盤の展開があるから、観客は素直に応援できるのだ。

ユナイテッド・シネマ豊洲(5スクリーン)にて 
配給:東宝 
2021年|1時間55分|日本|カラー 
公式HP: https://hinomaru-soul.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/name/nm1851637/

映画 ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~ オリジナル・サウンドトラック

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ヒノマルソウル ~舞台裏の英雄たち~」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: スマホがコンデジの出番をなくした | 新佃島・映画ジャーナル

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