ホロコーストの罪人

8月27日(金)公開予定 新宿武蔵野館ほか全国順次公開

忘れられかけたノルウェーのホロコースト

■あらすじ

 1930年代後半。チャールズ・ブラウデは、ノルウェーで最高のボクサーの一人だった。ブラウデ家はリトアニアから亡命してきたユダヤ人だが、この時代のノルウェーにユダヤ人差別はほとんどない。チャールズは非ユダヤ人のラグンヒルと結婚し、周囲もそれを祝福する。ナチスがノルウェーを占領したのは、そんの時だった。

 国王ホーコン7世の亡命やレジスタンス活動もあったが、ナチスの理論で「優良な北方人種」とされたノルウェー国民をナチスは緩やかに扱った。だが1941年にはユダヤ系住民の登録制度が始まる。翌年10月には、国中のユダヤ人男性が一斉に逮捕され、国内2ヶ所の収容所に集められる。チャールズも父や兄弟たちと収容所へ。そこで待っていたのは、強制労働と看守たちによる陰惨なリンチだった。

 そして翌月。警察に国内のユダヤ人を全員逮捕せよとの命令が下った。ラグンヒルはチャールズの母を匿おうとするのだが……。

■感想・レビュー

 ノルウェーの作家マルテ・ミシュレの著書「最大の犯罪」(未訳)を、エイリーク・スヴェンソン監督が映画化した作品。ナチスドイツ占領下のノルウェーで行われたユダヤ人狩りを、ユダヤ系のブラウデ家の人々に起きた出来事を通して、ほぼ時系列に再現していく。主人公のチャールズは実在の人物で、1935年から40年までノルウェーのフライ級とバンタム級の国内チャンピオンとして活躍。亡くなったのは1991年だから、それほど遠い過去の人物ではない。

 第二次大戦中にナチスドイツの占領地で行われたユダヤ人狩りはよく知られているが、北欧のノルウェーまでがその対象になっていたというのは初めて知った。当時のノルウェーには1600人ほどのユダヤ人がいたが、そのうち773人がアウシュヴィッツに送られ、630人が中立国のスウェーデンに脱出、100人ほどが国内に潜伏して終戦を迎えたという。アウシュヴィッツから生還したのは、わずか34人だった。

 映画はこのユダヤ人狩りに、ノルウェーの一般国民が積極的に協力していたことを描いている。彼らは迫害の傍観者ではなく、ましてやユダヤ人と同じナチスの被害者でもなかった。彼らは迫害の加害者なのだ。前日まで隣人として普通の近所付き合いをしていた人が、今日はユダヤ人を捕らえて収容所に送り込むナチスドイツの手先になっている。映画の中で一番不気味で恐ろしいのはそこだろう。

 歴史ドラマだが、映画はその歴史性をあまり強調せず、愛し合う家族が巨大な暴力に巻き込まれて行く様子を現代劇と同じタッチで描いている。価値観や倫理観、考え方、人間同士の関係などは、今現在と何も変わらない。ホロコーストは、我々の日常の隣にある。

 ところで今年はなぜかホロコーストものの映画が多い。僕が観ただけでも、『復讐者たち』があり、『アウシュヴィッツ・レポート』があって、今回の映画で3本目。なぜだろうか……。

《関連作品》復讐者たち
《関連作品》アウシュヴィッツ・レポート

(原題:Den største forbrytelsen)

京橋テアトル試写室にて 
配給:STAR CHANNEL MOVIES 
2020年|2時間6分|ノルウェー|カラー 
公式HP: https://holocaust-zainin.com/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt11390442/

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ホロコーストの罪人」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: スマホがコンデジの出番をなくした | 新佃島・映画ジャーナル

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