6月11日(金)公開 全国ロードショー
菅田将暉主演の和製サイコサスペンス
■あらすじ
マンガ家志望の山城圭吾は、有名マンガ家のアシスタントをしながら、デビューを目指して作品の持ち込みを続けている。画力や構成力には非の打ち所がない。だがキャラクターの弱さが、圭吾の作品を凡庸なものにしていた。クライムサスペンス指向なのに、犯人像にとがった魅力がないのだ。圭吾はマンガ家への道を諦めかけていた。
だが勤め先のマンガ家からスケッチを依頼されて夜の街に出た圭吾は、そこでたまたま一家四人殺害事件の現場に出くわす。現場は血の海。そこから立ち去る若い犯人と、圭吾は確かに目が合った。だが圭吾はそのことを警察に黙っていた。この犯人を主人公に、事件をモデルにしたマンガ作品を描きたいという衝動が勝ってしまったのだ。
1年後、山道で起きた運転手家族四人殺害事件の現場を調べていた清田刑事は、現場の状況があるマンガに瓜二つだと気付く。それは山城圭吾の「34(さんじゅうし)」という作品だった……。
■感想・レビュー
菅田将暉主演の和製サイコサスペンス映画。このジャンルは日本だとなかなか成立しにくいのだが、主人公をマンガ家に設定することで、日本の文化風土にうまく着地させていると思う。
細かな部分に突っ込みどころはあるが、前半はストーリーにぐいぐい引き込まれる。売れないマンガ家の生活を丁寧に描写した後、殺人事件の現場と犯人への遭遇という最初の盛り上がりを経て、物語をすぐ第二の事件発生現場に移動させるテンポの良さ。この時点で冒頭の事件からだいぶ時間がたっているのだが、それを伏せたまま刑事を登場させ、マンガとの共通点を発見させて、売れっ子マンガ家になった圭吾が再登場する展開になる。省略すべきところは省略し、描かれている部分は細部の描写も疎かにしない緩急自在の筋運び。じつに見事なものだ。
映画はしかし、後半になって失速してしまう。それまでも犯人や主人公の行動に腑に落ちないところは数々あるのだが、「新興宗教みたいなコミューン」の話が出てきたあたりから、話の筋道がわかりやすくなりすぎるのだ。映画はそれまで、真っ暗闇の中を手探りで歩かされるような不気味さがあった。だがここで突然、巨大な照明機材が投げ込まれて周囲を煌々と照らし出す。犯人の動機も行動もすべてがこれほどあからさまにされては、暗闇の不気味さはぶち壊しだ。僕はここからさらに物語をひっくり返して、観客を再度暗闇に投げ込んでくれることを期待したが、それがないまま映画は終わってしまった。
世の中に完璧な映画は滅多にない。名作と言われる作品も、大小の傷を抱えている。だから設定にや物語や描写に傷があることを指摘することで悦に入るのは、映画ファンとして少々ハシタナイことだと思っている。映画の中の傷は多くの場合、映画の作り手も承知の上で残っている。それをどう乗り越えるのかが、作り手の才覚だろう。その点で本作前半は文句なし。だが後半は残念だった。
ユナイテッド・シネマ豊洲(2スクリーン)にて
配給:東宝
2021年|2時間5分|日本|カラー
公式HP: https://character-movie.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt14118266/
posted with AmaQuick at 2021.07.10映画「キャラクター」製作委員会(著)
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