ディナー・イン・アメリカ

9月24日(金)公開予定 全国順次公開

中流家庭が生みだす息苦しさをぶっ壊せ

■あらすじ

 ペットショップで働くパティの生活はどん詰まり状態だった。仕事の行き帰りに合う高校生には容姿や態度をバカにされ、家の中では口うるさい父母に何かと干渉され、仕事場でもことあるごとに店長から叱責されている。

 そんな彼女にとって唯一の楽しみは、大好きなパンクパンド「サイオプス」の曲を大音響で聞きながら踊り狂い、マスターベーションしている写真を撮って、バンドのリーダーである覆面ボーカリストのジョンQにファンレターを送ること。彼女はそんなことを、もう2年ぐらい続けている。出口は見えない。どん詰まりだ。

 同じ頃、ジョンQことサイモンは行く先々でトラブルを起こし、懸賞金付きのお尋ね者になっていた。そんな彼が出会ったのがパティ。行き場のなかったサイモンは、キリスト教の伝道師だと身分を偽ってパティの家に居ついてしまう。サイモンはそこで、バンドの他のメンバーがライブを計画していることを知らされる……。

■感想・レビュー

 田舎町で最低な生活を強いられている若い女と、その田舎町で同じぐらい最低な日々を送っている若い男が出会い、運命的な恋に落ちるラブストーリー。全体に漂う貧乏くささは、『バッファロー’66』(1998)や、『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)などにも通じるアメリカン・インディーズ映画。明るく楽しく健全な映画ではないが、そもそも人間の営みが常に明るく楽しく健全なわけではない。ずっこけて間抜けな等身大の青春像に、ある種の救いを見出す人も多いに違いない。

 ベン・ステイラーが製作したとういのが映画の売りなのだが、逆に言えば誰もが知る有名な名前がこのぐらいしかないという意味でもある。監督のアダム・レーマイヤーはバイオレンスホラーの『バニーゲーム』(2011)が日本に紹介されているだけだし、主演のエミリー・スケッグスやカイル・ガルナーの名を見て、顔が思い浮かべられる人はほとんどいないに違いない。ただし本作を観れば、この顔は忘れられないものになるに違いない。

 主人公のパティとサイモンはそれぞれ中流家庭の出身で、生活レベル自体は何不自由なく暮らしていけるはずのものだ。そこには目に見える貧しさや虐待は存在しないのだが、家の中には親や家族による抑圧と支配で非常に息苦しく風通しの悪い空気が出来上がっている。この家庭の描写は、今この時の若者たちの現実だという気がする。パティの家に現れたサイモンはそこに新しい風を吹き込むトリックスターだが、その彼も自分の家に戻れば全く無力になってしまうのがリアルだった。

 パティの前に白馬の王子のように現れたサイモン。だが彼も両親の家では羽をむしられ、完全に手足を縛られて覇気を失ってしまう。だからこそ、そこから彼を救出するパティを観客は心から応援するようになるのだ。

 二人は運命の恋人同士。お似合いのカップル。それを信じさせるのが映画の力というものだ。

(原題:Dinner in America)

京橋テアトル試写室にて 
配給:ハーク 配給協力:EACH TIME 
2020年|1時間46分|アメリカ|カラー|2.39:1|5.1ch 
公式HP: http://hark3.com/dinner/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt9058654/

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ディナー・イン・アメリカ」への1件のフィードバック

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