あらののはて

8月21日(土)公開予定 池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

8年ぶりに再会した男女に何が起きる?

■あらすじ

 高校2年生の冬。野々宮風子は同級生のアランこと大谷荒野に誘われて、彼の絵のモデルを務めることになる。誰もいない教室で机の上に椅子を置き、その上に腰掛けてポーズ。だが荒野が紙の上で木炭を滑らせ始めてしばらくした頃、彼女は異様な高揚感の末に失神してしまう。それはエクスタシー?

 この日の後、荒野は学校から姿を消した。どうやら退学になったらしいが、詳しいことはわからない。

 それから8年。風子は友人の絵画教室でモデルの仕事をしているが、あの日自分が感じた絶頂感の正体がわからないでいる。その後は何度もモデルを引き受けたが、同じような高揚感は少しも感じたことがない。風子は荒野を探して、もう一度彼のモデルになってみることを決意する。

 荒野は恋人のマリアと同棲中だった。荒野は突然訪ねてきた風子を頑なに避けようとし、マリアはそんな二人の過去を勘ぐって、恋人を取られるのではないかと身構えるが……。

■感想・レビュー(ネタバレに注意)

 青春時代のシッポを引きずる主人公たちが、青春時代に落とし前を付けようとする物語。同様のテーマを扱う映画は世の中にたくさんあるのだが、この映画はそれを一人の男と一人の女の小さな物語に落とし込んでいる。映画後半はそこにもう一人加えて三角関係風の展開になるが、ここで登場する3番目の人物は、物語の進行を促す狂言回しでしかない。

 物語の中では「絵のモデルをしている時にイッてしまった」という特異な体験が取り上げられているのだが、ここに性的な意味合いはあまり感じられなかった。性的な意味合いなら、むしろその前のチューインガムを巡るやり取りの方が濃厚だ。「モデルをしていてイッた」という話は、正直まったく良くわからないのだが、これは主人公たちの間に確かにあった「特別な関係」や「特別な時間」の比喩として解釈することができる。

 風子はモデルをしている最中にイッてしまい、気を失ってしまう。荒野は気を失った彼女を抱きとめるが、その後学校を辞めて姿を消してしまう。二人の間にあった「特別な関係」や「特別な時間」はここで消え去る。この時、モデルをしていた風子は手にしていたリンゴを取り落としている。これは「失楽園」の物語。風子が「モデルをしていたときにイッてしまった」という性にまつわる話をしていた理由は、これが「性」を知ることでエデンの園を追われる男女の物語だからだろう。

 一度失われたエデンの園に、人は戻ることができない。楽園にあった「特別な関係」や「特別な時間」は、そこを離れてしまえば二度と戻ってこないのだ。風子と荒野は再会し、中断された時間を再び再開しようとする。だがそこには、何も特別なことは起きない。大人になった風子と荒野は、再び無垢な高校生に戻ることはできない。大人になってしまった男と女は、もはや子供には戻れない。

 ロマンチックな幻想よさらば。この身もふたもない結論が、なぜか新鮮だ。

映画美学校試写室にて 
配給:Cinemago 
2020年|1時間9分|日本|カラー|16 : 9|DCP 
公式HP: https://runecinema.com/aranonohate/ 
IMDb: https://www.imdb.com/

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