殺人鬼から逃げる夜

9月24日(金)公開予定 TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

古典的な設定を逆手に取ったサスペンス・スリラー

映画『殺人鬼から逃げる夜』のチラシ画像

■あらすじ

 コールセンターの手話担当として働くギョンミは、同じ聾唖者の母親と二人暮らし。母は裁縫の仕事で金を貯め、娘と二人で済州島に旅行する計画を立てている。母子二人の平和な生活だ。

 だが仕事を終えていつものように車を駐車場に入れた帰り道で、ギョンミは薄暗い路地から投げ出されたハイヒールに気付く。何だろう? そう思っているうちに、靴がもう一つ飛んでくる。靴が投げられた方に向かってみると、路地の暗がりで助けを呼ぶ若い女。彼女は何者かに刺されたらしい。そこに襲いかかる犯人の男。ギョンミは慌てて逃げ出した。

 何とか男か逃げ出し、母と合流して助けを呼ぼうとするギョンミ。そこにやって来たのは、妹を探しているという若いサラリーマン風の男だった。さっきの女性の兄かもしれない。ギョンミは路地を指差すが、言葉が喋れないギョンミは事情をよく説明することができない。異変を察知して、警官も駆けつけてくるのだが……。

■感想・レビュー

 聴覚障害を持つヒロインが、殺人鬼に命を狙われるというサスペンス・スリラー。障害者を持つヒロインと凶暴な犯罪者の対決としてすぐ思い出すのは、オードリー・ヘップバーンが盲目のヒロインを演じた映画『暗くなるまで待って』(1967)だろう。本作はそれに似たヒロインと犯人の追いかけっこの末に、観客の多くが見たこともないような、まったく新しい恐怖を味わわせてくれる。

 これはコミュニケーション不全の寓話だ。主人公は聾唖者だが、言いたいことが伝わらない、言っていることが通じない、言ったことを信じてもらえないというのは、障害の有無に関わらず世の中にしばしば起こること。この映画を観ながら主人公の置かれた立場に共感してしまうのは、誰もが多かれ少なかれそうした場に居合わせたことがあるからだと思う。

 本作のもう一つの面白さは、登場する犯人像にある。この手の犯罪映画では、犯人が第三者に顔を見られないように、証拠を残さないように行動するのが常だ。だがこの映画の犯人はそれとはだいぶ違う。彼は自分の顔がばれることを恐れない。防犯カメラなどに顔が写り込んでもまったく気にしない。犯罪者としてはきわめて雑で大ざっぱな犯行手口。しかし大胆な行動と機転の利いた言い逃れに長ける彼は、警察に絶対捕まらないという自信を持っている。

 こんな犯人像は、以前なら「リアリティがない」と簡単に一蹴されてしまったと思う。連続殺人犯が、なぜ証拠を残したまま罪を重ねられるのか。明らかに合理性を欠いたこの行動こそが、この犯人の恐ろしさになる。彼には我々の知る常識が通じない。用意周到に逃げ道を作ろうとする意図がまるで見えず、それでいて警察を出し抜き逃げおおせているモンスターだ。

 しかしこれはこれで、現代型の犯人像なのだと思う。悪事を隠そうとする人間は、悪事が悪であることを知っている。それを隠そうとしない人間がずっと恐ろしい。

(原題:미드나이트)

GAGA試写室にて 
配給:ギャガ 
2021年|1時間44分|韓国|カラー|シネスコ|5.1ch 
公式HP: https://gaga.ne.jp/satujinki/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt14757872/

暗くなるまで待って [DVD]

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posted with AmaQuick at 2021.08.23オードリー・ヘップバーン(出演), アラン・アーキン(出演), リチャード・クレンナ(出演), テレンス・ヤング(監督), オードリー・ヘップバーン(Unknown)
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