これは君の闘争だ

11月公開予定 シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

政治闘争に挑む高校生たちの青春

映画『これは君の闘争だ』チラシ画像

■あらすじ

 2015年10月。ブラジルのサンパウロで、教育予算削減に抗議する高校生たちが学校をロックアウトする事件が起きた。この事件はブラジル全土に波及し、翌月には200以上の学校が学生たちに占拠されたという。このドキュメンタリー映画は、この運動に参加した高校生たちの証言に基づいている。

 話は2013年にさかのぼる。この年の6月、サンパウロの公共交通料金値上げに対する大規模な抗議デモが発生した。路上に出たデモ隊は、やがてバス料金値上げ意外にもさまざまな抗議の声を上げ始めて大規模な反政府デモに発展。これを鎮圧するため動員された警官隊の暴力も問題となり、政府は交通料金の値上げを撤回した。この時の成功体験が、2015年の高校占拠への導火線となる。

 高校生たちの学校占拠は成功する。だが行政もマスコミも、このことをほとんど無視した。社会に自分達の主張を伝えようと、高校生たちはさらなる行動に打って出る。

■感想・レビュー

 映画は2015年のデモに参加していた高校生(元高校生?)のインタビューで綴られていて、当時の記録映像やニュース映像も交えながら、2013年から2018年頃までのブラジル社会の動きを紹介している。それは左派政権から保守政権への大転換であり、学生たちの市民運動が敗北していく過程でもあった。

 映画を観ながら、僕は日本で半世紀前に起きた学生運動のことを連想した。高校生たちは学校を占拠しても話題にならないことに業を煮やし、道路封鎖や議会占拠という新たな行動に出る。これは日本の学生運動でも、似たことが起きていたのではないだろうか。

 だがこうした社会への示威行為は、話題になったとしても市民の共感を得るとは限らない。道路封鎖は迷惑だ、学生たちはわがままだ、その乱暴狼藉を取り締まらない行政や警察は弱腰だと考える人たちもいる。実力行使を伴う市民運動は、大衆から離反するリスクをはらんでいる。その頃合いを見計らって、それまで学生たちに同情的だった警察も強硬な態度に転じる。振り下ろされる警棒や飛び交うガス弾の前に、学生たちはあまりにも無力だ。

 半世紀前の日本の学生運動も、同じ経緯をたどった。その結果学生たちは、権力に敗北して日常生活に戻って行く多数派グループと、権力の暴力に自らの暴力で対抗しようとする過激派に分裂したのだ。だがこれこそ権力側にとっては好都合だった。

 本作が爽やかな後味を残すのは、学生運動が新しい世代へと継承される様子を描いているからだ。

 原題を直訳すると「あなたの(再)帰還を待つ」という意味。英題は「Your Turn」で「あなたの順番」という意味だ。このタイトルは映画の最後に運動から去って行く学生たちが、運動を引き継ぐ後輩たちにかけた言葉から取られているのだと思うが、同時に映画を観ているひとりひとりの観客に「あなたはどうするか?」と問いかけているようにも思う。

(原題:Espero tua (Re)volta)

映画美学校試写室にて 
配給:太秦 
2019年|1時間33分|ブラジル|カラー|16 : 9|HD 
公式HP: https://toso-brazil.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt9784842/

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これは君の闘争だ」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 月島で夏木マリスペシャル | 新佃島・映画ジャーナル

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