なれのはて

12月18日(土)公開予定 新宿K’s cinemaにてロードショー

男たちの流れ着いたフィリピンは天国か地獄か

映画『なれのはて』のチラシ画像

■あらすじ

 嶋村正は元警察官。フィリピーナに貢いだ果てに、離婚してフィリピンで仕事をすることに。だが脳梗塞で倒れて失業。今は偽装結婚の相手から、わずかな金を与えられて暮らしている。

 安岡一生は仕事でフィリピンにやってきて、そのまま居ついてしまった男だ。マニラで日本人向けのガイドとして細々と仕事をしながら、事実婚のフィリピン人女性と暮らしている。

 谷口俊比古は元ヤクザだという。日本で事件を起こしてフィリピンに逃れ、流れ流れて行き着いた路上生活。そこで現地の人たちに助けられ、今では自転車屋の軒先に居候中だ。

 平山敏春は離婚後にフィリピンパブにはまり、その後は知人に誘われフィリピンへ。だが知人に金を持ち逃げされ、今は零細な仕事をしながら妻や子供たちと暮らしている。

 本作は「困窮邦人」と呼ばれることもある男たちの姿を、フィリピンのスラム街の奥まで数年がかりで追いかけたドキュメンタリー映画だ。

■感想・レビュー

 日本でフィリピンパブが流行ったのは、バブルの頃だっただろうか。多くのフィリピン人女性が来日して日本中の飲食店で働き、そこに通いつめる男たちの中には、彼女たちと結婚する者も現れた。タクシー運転手とフィリピーナの恋を描いた崔洋一の『月はどっちに出ている』は1993年の作品だ。Wikipediaによればフィリピンパブの最盛期は2004年頃で、その後はビザ発給に制限がかかるなどして、フィリピンからの出稼ぎは激減する。

 日本から潮が引くようにフィリピンパブが消えて行ったとき、その潮に引き込まれるようにしてフィリピンに渡った男たちがいる。それがこの映画に登場する男たちだ。映画には4人の男たちが登場するが、実際にはもっと大勢の男たちがフィリピンに渡っている。映画に登場するのは、その中で監督の取材網に引っかかり、なおかつ取材対象として撮影に応じてくれた人たちだけだ。

 フィリピンに渡って平和な日常を送っている日本人も多いと思う。むしろその方がずっと多いだろう。だが道を踏み外してスラム街に転がり込む人たちもいる。映画を観ていて驚くのは、外国から来た言葉も通じぬ「踏み外し組」を、フィリピンのスラムが受け入れてしまう包容力だ。金目当ての者も多いようだが、映画に登場するのは金もなくしたどん底の男たちがほとんど。それでも彼らは無一文の状態から、仕事をあてがわれ、住まいを得て、何とかその日その日の暮らしを立てている。

 おそらくかつては日本にも、道を踏み外した者たちを受け入れる場所があったのだ。都市部には貧民街があって、多くの人がそこに吸い込まれていった。だが今の日本にそれはない。貧しい者同士が肩寄せ合って暮らす場所は消えて、公的な扶助がその代替物になった。

 それが良いのか悪いのかはわからない。映画に登場するスラムでの暮らしが、健康で文化的な最低限度の生活だとも思えないからなのだが……。

TCC試写室にて 
配給:プライトホース・フィルム 
2021年|2時間|日本|カラー|DCP 
公式HP: https://nareno-hate.com/ 
IMDb: https://www.imdb.com/

日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」 (集英社文庫)

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posted with AmaQuick at 2021.09.15水谷 竹秀(著)
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