007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

10月1日(金)公開 全国ロードショー

007という一つの物語の終わり

007 ノー・タイム・トゥ・ダイのポスター画像

■あらすじ

 スペクターの首領ブロフェルドを捕らえたジェームズ・ボンドは、恋人マドレーヌと生活するためMI6を去る。だがその直後、ボンドを襲うスペクターの暗殺者たち。その時ボンドの中に芽生えたのは、恋人に対する拭いがたい疑念だった。彼は恋人に別れを告げる。

 それから5年。ジャマイカで暮らすボンドのもとに、CIAのフィリックス・ライターが仕事を持ち込んでくる。それはスペクターに誘拐された細菌学者の奪還。一度はこれを断ったボンドだったが、「新しい007」と名乗る女性エージェントに手を出すなと釘を刺されたことから、結局仕事を引き受けることにした。

 目的地はキューバ。スペクターの全幹部が集まるパーティに忍び込んだボンドは、そこで細菌の入ったガスを浴びるが、死んだのは周囲にいるスペクターのメンバーたちだけだった。この細菌兵器は遺伝子情報をもとに、特定のターゲットだけを死に至らしめる究極の暗殺兵器だった。

■感想・レビュー

 2006年の『007/カジノ・ロワイヤル』から15年。本作も含めて5本作られた「ダニエル・クレイグ版ボンド」の完結編だ。過去のボンド作品が一話完結の連作方式だったのに対し、クレイグ版は前作の設定やエピソードを次につなげて行く連作長編方式。本作は前作『スペクター』(2015)のエピソードは当然のこと、1作目『カジノ・ロワイヤル』のドラマも引き継いでいる。

 ボンドがなぜマドレーヌを強く疑い、彼女のもとを去ったのか。その伏線になっているのは、『カジノ・ロワイヤル』で巡り会った恋人ヴェスパーの裏切りだ。彼は愛した女に裏切られ、さらに彼女を失うという手ひどい目にあった。彼はこのトラウマをマドレーヌとの出会いによって乗り越えたかに見えたのだが、その心の古傷が再び甦ってしまうのだ。

 クレイグ版ボンドは1作目から常に「これで終わっても問題なし」というエンディングで幕を閉じたが、そのたびに次作でボンドが仕事に復帰することを繰り返した。だがこのボンドも、いよいよ今回が見納めとなる。誰が何と言おうと、ダニエル・クレイグのボンドはこれで最後。彼はこの映画で、世界中の誰もが納得する有終の美を飾ったと思う。

 ボンドは人殺しなのだ。その身分は、英国政府公認のプロの殺し屋。その男が、人並みの幸福な暮らしなど手に入れられるはずがない。人を殺した者は、自分も殺されねばならない。人殺しに安息はないのだ。それが「公正世界仮説」の支配する映画の原則であり、大衆娯楽映画である007シリーズもそこから自由にはなれない。

 クレイグ版ボンドは、シリアスで、リアルで、真面目すぎたのだ。このことが、結局はジェームズ・ボンドという架空の男を本作の立ち位置まで追い込んでしまった。映画はフィクションなんだから、世界を救うヒーローが愛する女と幸せになったっていい。でも作り手の誠実さが、それを許さなかったのだろう。寂しい話だ。

(原題:No Time to Die)

109シネマズ木場(シアター2)にて 
配給:東宝東和 
2021年|2時間44分|イギリス、アメリカ|カラー|2.39 : 1 
公式HP: https://www.007.com/no-time-to-die-jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt2382320/

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』OST

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』OST

posted with AmaQuick at 2021.10.25Hans Zimmer(アーティスト)
Decca (2021-04-01T15:00:00.000Z)
5つ星のうち4.2
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007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」への2件のフィードバック

  1. > 『スペクター』で巡り会った恋人ヴェスパーの裏切り

    『カジノ・ロワイヤル』ではないでしょうか。

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