11月5日(金)公開 全国ロードショー
アレサ・フランクリンの前半生を映画化
■あらすじ
1952年のミシガン州デトロイト。10歳の少女アレサの父は有名な牧師で、家ではしばしば多くの客を招いたパーティが開かれた。父はそんな時、大勢の招待客の前でアレサの歌声を披露させる。アレサは父にとって自慢の娘だった。
数年後。父の教会で聖歌隊のメンバーとして活動するアレサは、父の巡回殿堂に同伴してあちこちの集会で歌を披露するようになっていた。父はコロムビアレコードにアレサを売り込み、1960年にレコードデビューが決定。だがデビューはしたものの、アレサはヒットに恵まれない不遇の時代が続く。
家族の反対を押し切って音楽マネージャーのテッド・ホワイトと結婚したアレサだったが、ヒット曲がでないのは相変わらず。その後コロムビアとの契約が失効したとき、アレサたちに声をかけたのはアトランティック・レコードのジェリー・ウェクスラーだった。
この出会いが、「ソウルの女王」の誕生につながっていく。
■感想・レビュー
米国の歌手アレサ・フランクリンの伝記映画。彼女は2018年に亡くなっているが、映画は彼女が1972年にゴスペルのライブ録音を行うところまでを描く。
上映時間2時間半が、ほとんど歌で埋め尽くされた伝記ミュージカル。歌手でもあるジェニファー・ハドソンがアレサを演じ、劇中の曲はもちろん吹き替え無しの熱唱。パワフルなライブシーンだけでも、この映画を映画館で観る価値はあると思う。
物語は「放蕩息子の帰還」パターンだ。教会でゴスペルを歌って育った少女が、ポピュラーソングの世界での成功を夢見て親の保護下から飛び出して行く。しかしさんざん苦労した挙げ句、自分のルーツであるゴスペルの世界に戻ってきて父と和解するというのが概略。ゴスペルにはじまりゴスペルに終わるゴスペル映画であり、教会で育ったヒロインが一度は信仰を見失いかけるが、やがて信仰の世界に戻ってくるという宗教映画でもある。
この「宗教映画」としてのエピソードを、ごまかさず丁寧に描いているのがこの映画の特徴かもしれない。「依存症の治療なら医者に行け」とプロデューサーに言われたアレサが、「もちろん医者にもかかってる。でも教会も必要」と言い切る場面。父に向かって「信仰から逃げようとしたこともあったけど、結局ここに戻って来た」と告白する終盤の和解シーン。彼女は父との和解を通して神と和解し、自分の過去を受け入れてすべてをゆるす決意をしたのだ。
こうした物語の大きな枠組みが見えると、劇中に配されているさまざまなエピソードのまとまりが良く見える。しかし細かな伝記的エピソードは、もう少し整理できたのではないだろうか。例えば彼女が父の暴力をまったく憶えていないという話は、映画の中で孤立していてどこにもつながっていかない。いや、実際にはつながっているのだが、それが不明瞭になってしまうのだ。
これは伝記映画の難しさでもあるのだが……。
(原題:Respect)
ユナイテッド・シネマ豊洲(6スクリーン)にて
配給:ギャガ
2021年|2時間26分|アメリカ|カラー|2.39 : 1
公式HP: https://gaga.ne.jp/respect/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt2452150/
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