グレート・インディアン・キッチン

1月21日(金)公開 新宿ピカデリーほか全国順次公開

男たちは女性蔑視や女性差別に気付かない

グレート・インディアン・キッチン

■あらすじ

 結婚したばかりの若いカップル。夫は女学校の社会科教師で、生徒に対して家庭の大切さを語る好青年。妻は高等教育を受けて外国育ちのダンス教師。インド式の伝統的な結婚式が盛大に行われ、二人には幸せな未来が約束されていた。

 妻は夫の家族と同居することになる。家族は新妻を優しい笑顔で迎え、妻も家族の期待に応えようとする。妻の仕事の第一は家事だ。義母を手伝いながら、少しずつ家の仕事を憶えていく妻。戸惑うことも多いが、嫁したからには婚家の流儀を覚えるのも妻のつとめだ。

 そんな中で、義妹の出産を手伝うため、義母がしばらく家を空けることになった。家に残った妻に、一切の家事が重くのしかかる。男たちは家事にノータッチ。義父や夫の家事に対する細かなダメ出しがあるが、それに応えることが妻のつとめ。日々の家事仕事で疲れ切った妻の顔からは、嫁いできたばかりの頃に見せていた明るい笑顔が少しずつ消えて行くのだった。

■感想・レビュー

 独身時代に現代的な生活を満喫していた女性が、結婚して家父長制的な家族の現実に直面するという辛辣なホームドラマ。夫婦と家族を中心にした「小さな物語」だが、ここに描かれていることは、世界中の女性と家族に起きている「大きな物語」のひとかけらなのだ。

 物語の舞台はインド南西部のケーララ州だが、ここに描かれている「女性の被る理不尽さ」は、インドだから起きていることではない。例年正月前後になると、Twitterのタイムラインは「夫の実家に行くのが嫌だ」という妻たちの書き込みで埋め尽くされる。それはこの映画と同じ家父長制的な家族の構造が、今も日本の中に生き残り、多くの女性を苦しめていることの証明だと思う。

 映画の中には女性の生理を穢れたものとして忌む習慣が出てくるが、じつは日本でもつい半世紀ほど前までは、女性の生理を穢れたものとして忌む考えがあったのだ。それは今でも生き残っている。月経を「月の障り」と言ったりするが、これは「毎月の穢れ」の意味だ。生理中の女性は穢れている。相撲の土俵が女人禁制なのはなぜなのか。それは女性には月の穢れがあるからだ。寺社によっては、生理中の女性の参拝を禁じているところもある。そんな日本で、映画の中の生理タブー、生理嫌悪を批判できるだろうか。

 構造的な差別や搾取は、そこで暮らす個々の人間の考えとは関係なしに発動する。映画に登場する男たちが、ことさら差別主義者だというわけではない。彼らは自分達の立っている場所が、差別の構造で成り立っていることに無自覚なだけだ。そしてこの無自覚に、日本も広く覆われている。

 この映画はインドに生き残る古い家族の姿を描くと共に、インドで生まれている新しい家族の姿も描いている。妻が職業を持ち、家事を夫婦で分担する若い夫婦だ。インドは変わりつつある。だからこそ、こうした映画も作られているのだ。日本も変わる必要があるだろう。

(原題:The Great Indian Kitchen)

109シネマズ木場(シアター8)にて 
配給:SPACEBOX 
2021年|1時間40分|インド|カラー 
公式HP: https://tgik-movie.jp/ 
IMDb: https://www.imdb.com/title/

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