機動戦士ガンダム/ククルス・ドアンの島

6月3日(金)公開 全国ロードショー

同窓会映画としては寂しい出来だった

■あらすじ

 アフリカ北西沖の大西洋にあるカナリア諸島。その最北部にあるアレグランサ島に、ジオンの残置諜者がいるらしい。偵察に出かけた連邦のMS隊はことごとく未帰還になっている。カナリア諸島は北米とヨーロッパを結ぶ交通の要衝であり、無視することはできない。ホワイトベースに残敵調査の命令が下った。

 偵察部隊は、無人島だったはずの島で謎の子供たちに遭遇。アムロはザクの攻撃を受けて、ガンダムごと崖から転落してしまう。音信不通になったアムロを残して、他のメンバーは一時島から撤退することになる。

 取り残されたアムロが目を覚ますと、そこにはジオンの元兵士ククルス・ドアンと大勢の子供たちがいた。ドアンは戦災孤児の子供たちと島に隠れ、自給自足の生活を送っているのだ。アムロはドアンが隠したガンダムを捜索しながら、少しずつ島の生活に打ち解けていく。

 だがこの島に、ジオン軍の精鋭サザンクロス隊が上陸する。彼らの狙いは……。

■感想・レビュー

 これは40数年ぶりの同窓会みたいな映画だ。もともと「続編映画」というのは同窓会要素が大きい。オリジナルのスタッフやキャストが同じように参加して、同じような話を同じように繰り返す。観客はそれを観て、「変わらないこと」に安堵するのだ。

 今回の映画はテレビ版「ガンダム」のキャラクターデザインやアニメーションディレクターを担当した安彦良和が監督を務め、古谷徹や古川登志夫といったオリジナルキャストがテレビ版と同じ役で再登場している。劇場で客席を見回せば、そこにいるのは白髪頭のオッサンが大半。

 中学生の頃「ガンダム」に夢中になった少年たちが、今は50歳代半ばになっている。僕も中学生の頃、劇場版「ガンダム」三部作の初日初回を観るために、横浜の相鉄ムービルや東劇に並んだ中学生の一人だった。劇場で今回の映画を観る人のは、その頃の同志たちだろうか。懐かしい……。

 だが懐かしいからこそ、懐かしい顔の変化がどうしても気になってしまう。アムロとカイ以外のボイスキャストは、オリジナルメンバーから交代している。それはしょうがない。何しろ40年たっているのだから。だがなまじオリジナルキャストが混じっているだけに、40年の間に失われてしまったものが気になってしまうのだ。

 同窓会が開かれたのは嬉しい。でも参加してみたらかつての同級生はほんの数人で、代わりに同級生の息子や娘たちがワイワイキャッキャと歓談してました……といった気分。オリジナル版が好きな人たちは、この同窓会にむしろ疎外感を味わってしまうのではないだろうか。ちょっと寂しいのだなぁ。

 この寂しさに比べたら、物語の構成や設定の不自然さなど些末な話だ。映画の最後に思ったのは、「安彦良和監督はこの映画で子供が描きたかったんだろうな」ということ。それが結果として物語の不自然さを生み出してもいるのだが、アニメ界の人間国宝みたいな人の新作だ。これでよしとしよう。

丸の内ピカデリー(ドルビーシネマ)にて 
配給:松竹 
2022年|1時間48分|日本|カラー 
公式HP: https://g-doan.net/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt15428330/

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