2022年5月20日(金)公開 全国ロードショー
序盤のもたつきを後半で取り戻せなかった
■あらすじ
「王子千晴監督に負けない作品を作ります!」と大見得を切って、斎藤瞳がトウケイ動画に入社してから7年。監督に抜擢された新作「サウンドバック 奏の石」の放送時間は、奇しくも王子監督の新作「運命戦線リデルライト」と同じになった。
「天才王子」の復帰にアニメファンは歓喜。だが瞳も負けられない。ここで番組がコケたら、自分にはもう次の作品を作るチャンスなどないだろう。そんな新人監督の思いが、現場のベテランスタッフたちに伝わっているのかいないのか……。
一方「リデルライト」の制作現場でも、大変なことが起きている。第1話の制作中に、王子監督が失踪したのだ。彼を7年のブランクらか引っ張り出した、プロデューサーの有科香屋子は青ざめる。クセの強い監督だとは知っていたが、まさか最初から?
ファン向けイベントで、斎藤監督と王子監督の対談が決まっている。これをすっぽかしたら、「リデルライト」は放送前にジ・エンドだ。
■感想・レビュー
タイトルは「覇権アニメ」という意味。そのシーズンの新作アニメの中で、最も話題になり視聴率を稼いだ作品に与えられる称号だ。本作は同じ曜日、同じ放送時間に放送がスタートする2本の新作アニメとそれに関わる人たちを主人公にした、異色のビジネスバトル映画になっている。
物語は2本のアニメ、「サウンドバック」と「リデルライト」の対決を描いているが、主役は各作品の監督とプロデューサーの合計4人。その中でも、「サウンドバック」の斎藤瞳監督と、「リデルライト」の有科香屋子プロデューサーが映画の主役と言えるだろう。
映画は前半のもたつきがちょっと残念。斎藤瞳が主人公だという事はすぐわかるが、有科香屋子プロデューサーの売り出しが少し弱い。王子監督の登場がだいぶ遅れることもあり、映画序盤は双発エンジンの片側がストップした状態でのよたよたした飛行になる。ここにエンジンがかかるのは、王子監督が「天才」の仮面をかなぐり捨ててからだ。
業界の裏事情を紹介した作品なのに、業界内を適切に説明してくれる仕組みがないのも映画前半がもたつく原因になっている。こういう場合は恥も外聞もなくナレーションなどで説明するか、狂言回しとして事情に疎い第三者を放り込むのが定石。この映画はあえてそうした常套手段を取らなかった。
余計な情報伝達屋がいない分、人物関係はスッキリしているし、それが映画後半の力強さになっているとは思う。とは言え、それが前半のもたつきを補って余りあるというわけでもない。ここはやはり、前半に何かしらの工夫が必要だったと思う。
登場人物たちの立ち位置が飲み込めてくる映画後半になると、物語は俄然盛り上がってくる。積み上げた薪の山に、一気に火が付いた感じだ。
これだけの物語を語るにしては、映画の尺が少し手狭だったのかもしれない。同じスタッフとキャストで、前後編3時間半ぐらいのテレビドラマ版を作ってくれたら嬉しい。
丸の内TOEI(1)にて
配給:東映
2022年|2時間8分|日本|カラー
公式HP: https://haken-anime.jp/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt16303194/
posted with AmaQuick at 2022.06.18
辻村 深月(著)
マガジンハウス (2017-09-06T00:00:01Z)
¥968
感動しました。
https://dalichoko.muragon.com/entry/992.html