7月1日(金)公開 全国ロードショー
これがロックンロールの誕生神話だ
■あらすじ
1997年。ラスベガスのホテルで、かつてエルヴィス・プレスリーのマネージャーだったトム・パーカー大佐が倒れた。病院に運び込まれたパーカーは、彼の人生にとって欠くことのできない男、エルヴィス・プレスリーについて語り始める。
1955年。人気カントリー歌手ハンク・スノーのマネージャーだったパーカーは、レコードを出したばかりの新人歌手エルヴィス・プレスリーと出会う。パーカーにはその音楽がまったく理解できなかったが、若者たちが夢中になっている様子を見て、パーカーはそこにビッグビジネスのにおいを嗅ぎつけた。
パーカーはエルヴィスのマネージャーになり、彼を大手のレコード会社に売り込むことに成功。ここからエルヴィスの快進撃がはじまるのだが、若者たち、とくに若い女性たちの熱狂ぶりは、保守的な大人たちを刺激することになる。
体制側の反発を恐れたパーカーは、新生エルヴィスをアピールして批判をかわそうとする。
■感想・レビュー
バズ・ラーマン監督の手による、エルヴィス・プレスリーの伝記映画。主演はオースティン・バトラーとトム・ハンクス。バトラーはエルヴィスが乗り移ったような圧巻のパフォーマンスを見せるが、前半の若い頃は吹き替えなしでバトラー本人が歌っているらしい。
映画の見どころは2つある。まずはエルヴィスの生涯を通して、ロックンロールの歴史を映画的に再構成している点だ。
ロックンロールはブルースやゴスペルなどの黒人音楽を、白人の歌手がカントリーミュージックなど白人ポピュラー音楽の要素も取り入れながら歌うことで生まれたことになっている。
ロックは不良の音楽として大人たちの顰蹙を買うが、それでも爆発的な勢いで広がっていく。だがあまりにも短期的に成功を収めた初期のロックスターたちは、悪徳マネージャーや大勢の取り巻きに搾取され、アルコールやドラッグにまみれて死んでいく。
エルヴィス・プレスリーの生涯は、その後何度も繰り返される同様の「ロックの神話」のひな形になっているわけだ。
映画ではエルヴィスと黒人ミュージシャンとの関係を特に詳細に描いている。導入部の黒人クラブや黒人教会の描写、映画中盤にB・B・キングやリトル・リチャードが登場する場面は、この映画の中の忘れがたい場面になっていると思う。
映画の第2の見どころは、さまざまな映像と音響のテクニックを使って、エルヴィスが同時代の人々に与えた衝撃を、2022年の観客に伝えようとしている点だ。ライブシーンはバズ・ラーマン流の華麗な映像テクニックがふんだんに使われているし、使用楽曲はアレンジやサウンドの味付けなどで、現代の観客の耳にも聴き劣りしないよう細かな調整がなされている。
死を前にしたパーカー大佐が、自分が殺したと噂されるエルヴィスについて語るという構成は『アマデウス』からの借用だろう。トム・ハンクスが20世紀音楽業界のサリエリをじつに見事に演じている。
(原題:Elvis)
ユナイテッド・シネマ豊洲(3スクリーン)にて
配給:ワーナー・ブラザース
2022年|2時間39分|アメリカ|カラー|2.39 : 1
公式HP:https://wwws.warnerbros.co.jp/elvis-movie/
IMDb: https://www.imdb.com/title/tt3704428/
ELVIS (Original Motion Picture Soundtrack)
posted with AmaQuick at 2022.07.17
Various(メインアーティスト)
Sony Music Japan International (2022-07-29T00:00:01Z)
¥2,134