RBG 最強の85才

5月10日(金)公開 ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほかにて

米国リベラルの希望・RBGとは何者か?

 トランプ大統領の就任以来、保守とリベラルに引き裂かれたアメリカ社会。政権がなりふり構わず保守的な政策をすすめる中で、リベラル派の最後の砦、希望の星となっているのが、連邦最高裁判事のルース・ベイダー・ギンズバーグ(通称RBG)だ。1993年にクリントン大統領から指名され、アメリカの最高裁で史上2人目の女性判事に指名された彼女は、議会による公聴会で自分の生い立ちや過去の経歴について証言している。この映画は議会公聴会や、各種講演会での彼女の発言を縦軸に取りながら、ルース・ベイダーの足跡をたどっていくドキュメンタリー映画だ。優秀な成績で法科大学院を卒業しながら、当時の女性を雇う法律事務所は皆無だった。彼女は大学で学生たちに法律を教えるようになり、1970年代から性差別について争う訴訟で法廷に立つようになる。この時代に最高裁で勝ち取った幾つかの判決が、その後のアメリカ社会を大きく変えていったのだ。

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主戦場

4月20日(土)公開 シアター・イメージフォーラムほか全国順次

日系アメリカ人が見た従軍慰安婦問題

 日系アメリカ人のミキ・テザキは、英語教員として来日した際、日本における人種差別をテーマにした動画をYouTubeに投稿してネトウヨから大バッシングを受けた。「日本に差別などない!」というネトウヨの執拗な攻撃は、結果として日本の中にある根強い差別を浮き彫りにしてしていた。彼はその後、慰安婦少女像の設置を巡ってアメリカの地方議会まで巻き込んだ「従軍慰安婦問題」に注目する。何人かのアメリカ人が、この問題に関する権威やご意見番として、一部の日本人からもてはやされていることに興味を持つ。はたして慰安婦とは何なのか。それは性奴隷だったのか、それとも単なる売春婦だったのか。彼女たちは軍や警察によって強制連行されたのか。それとも自発的な応募だったのか。日本政府にこの問題の責任はあるのか。彼はこの問題で発言している多くの人々に取材を申し込み、慰安婦問題の歴史、争点となっている事柄などを詳細に調べはじめる。

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モアナ 南海の歓喜

9月15日(土)公開 岩波ホール

ドキュメンタリー映画の父が再現した南海の暮らし

 1920年代初頭、世界初のドキュメンタリー映画『ナヌーク(極北の怪異)』(1922)で好評を博したロバート・フラハティ監督は、家族とともにサモア諸島サバイイ島に移り住んだ。北極圏カナダでエスキモーの暮らしを撮影したのに続き、南太平洋の孤島でポリネシア人たちの暮らしを撮影しようとしたのだ。一家は族長の信頼を得て、さまざまな珍しい風習を撮影することに成功した。主人公は島の青年モアナだ。美しい島の風景の中で繰り広げられる、島民の伝統的な暮らし。島の周囲にある豊富な海の幸、ヤシやタロイモを中心にした食生活。植物の樹皮を薄く剥いで作る布と、そこに施される繊細な装飾。島に伝わる勇壮な祭りと、青年が大人の男になるため乗り越えなければならない通過儀礼。それが終われば、モアナと恋人との結婚式がはじまる。映画が完成したのは1926年。それから半世紀たち、フラハティの娘が映画に素晴らしい音声トラックを付けた。

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MIFUNE: THE LAST SAMURAI

5月12日(土)公開 有楽町スバル座ほか全国順次公開

三船敏郎なくして戦後チャンバラ映画なし!

 戦後の1950年代初頭から1970年代にかけて、海外から見た「日本人らしい日本人」「現代のサムライ」と言えば三船敏郎だった。中国山東省で日本人写真館主の息子として生まれた三船は、終戦後復員すると知人の紹介で東宝の撮影部に入社願書を出した。ことろがなぜか、これが東宝ニューフェイスの申し込みに紛れてしまった。こうして三船は、不本意ながら映画俳優になった。1947年のデビュー作『銀嶺の果て』で脚本を書いたのが黒澤明。黒澤はこの後、自身の作品に欠かせない俳優として三船敏郎を起用し続ける。『羅生門』(1950)のヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞で、主演の三船も日本を代表する映画俳優になった。以降は黒澤と三船の二人三脚で、『七人の侍』(1954)や『用心棒』(1961)など、映画史に残る数々の作品に出演し続けた。本作はそんな三船敏郎の姿を通して、日本映画の歴史を俯瞰してみせるドキュメンタリー映画だ。

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ボヤージュ・オブ・タイム

3月10日(金)公開 TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

テレンス・マリックが描く「いのちの営み」の世界

 「世の中は 何にたとえん 水鳥の嘴(はし)振る露に 宿る月影」と、曹洞宗の開祖である道元禅師は歌に詠んだ。世界の姿は、水鳥のくちばしから滴り落ちた水滴に映る月のようなものだ。それはきらめきながら水に落ち、あっという間に姿を消してしまう。だが月そのものは、その前も、その後も、夜空に輝き続けている。宇宙の誕生以来、星々は生まれては消え、地球の上では生命が生まれては消えて行く。ひとつひとつの命は儚く脆い。だがその背後には、宇宙誕生から一貫している命の営みの法則がある。命は現れては消える。これからも、命は現れ、そして消えて行くだろう。そのすべての命は、宇宙の中でひとつにつながっている。遠い昔に現れて消えた命が、いま生まれる命に力を与える。そしていま消えて行く命が、未来の命につながれていく。世界は命に満ちている。この映画は宇宙に満ちるすべての「いのちの営み」を、ダイナミックな映像で紡ぎ出していく。

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SUPER FOLK SONG ピアノが愛した女。[2017デジタルリマスター版]

1月6日(金)公開 新宿バルト9ほか全国公開

リバイバル公開された伝説の音楽ドキュメンタリー映画

SUPER FOLK SONG ピアノが愛した女。

 1992年の冬。シンガーソングライターの矢野顕子が、新しいアルバムの制作に取り組んでいた。アルバムタイトルは「SUPER FOLK SONG」。ピアノ弾き語りの一発録りにこだわったこともあり、膨大なNGテイクが出る。完全主義者の矢野はわずかなミスタッチも許さず、何度もリテイクを繰り返す。だが彼女のことをよく知るスタッフたちは、そのことに少しも異議をはさまない。アーティストとしての彼女を100%信頼しているのだ。自ら作詞や作曲も行う矢野だが、今回のアルバムではすべての曲がオリジナルではなくカバーだ。この映画では、はちみつぱいの「塀の上で」、大貫妙子の「横顔」、小室等の「夏が終る」、THE BOOMとの矢野の「それだけでうれしい」、糸井重里の「SUPER FOLK SONG」、THE BOOMの「中央線」、セルフカバーの「PRAYER」などの収録風景と、関係者のインタビューが収録されている。

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ヒッチコック/トリュフォー

12月10日(土)公開 新宿シネマカリテほか全国順次公開

名著「映画術」を補完する作品

ヒッチコック/トリュフォー

 1966年。ヌーヴェルヴァーグを代表する映画監督のひとりフランソワ・トリュフォーが聞き役となり、サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックを相手に長時間の取材を行ったインタビュー本「Hitchcock/Truffaut」が発売された。日本では「映画術 ヒッチコック/トリュフォー」のタイトルで知られるこの本によって、アメリカでは職人的な娯楽映画の監督と考えられていたヒッチコックは世界的な「映画作家」のひとりとなる。またこの本は、これから映画監督を目指そうとする世界中の若者たちにとってのバイブルとなった。この映画は当時の取材に使われた録音テープや写真をもとにして歴史的なインタビューを再現すると共に、完成した本の中ではスチル写真で取り上げられているヒッチコック作品の名場面を映画の引用という形で補完している。さらにスコセッシを筆頭とする10人の映画監督たちが、この本の影響について語っている。

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